研究課題/領域番号 |
19K12131
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山崎 啓介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (60376936)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シミュレーション / データ同化 / サロゲートモデル / 自動交渉 / マルチエージェント |
研究実績の概要 |
昨年度は多者間の自動交渉のマルコフ性に注目し、機械学習で研究が進んでいる隠れマルコフモデルととらえることで、エージェントの戦略から直接影響を受ける行動決定確率が推定可能であることを示した。今年度は交渉プロトコル(ルール)とマルコフ性の関係性を深く考察し、プロトコルと確率形式言語との関係性を見出した。これにより、マルコフ性を有するプロトコルは確率形式言語の階層の中で最も制約の強い確率正規言語のクラスに属することをしめした。言語階層には文脈自由文法などのより制約の弱い一般的なクラスが存在する。プロトコルとの関連性から、文脈自由文法と対応する交渉プロトコルの例を作成した。この関連性を応用することで、これまで議論されてこなかった交渉プロトコルの複雑さを確率形式言語の立場から定義することが可能となった。
また、昨年度は交渉時間のモーメント(平均や分散など)を解析的に計算できるエージェントモデルクラスを定義した。今年度はこれを拡張し、交渉の時間発展と関数の級数展開の関連性を発見した。これにより解析的なモーメント計算が可能なための必要条件を示すことができ、さらに級数展開からエージェントモデルを逆に作成する方法も開発した。作成されたエージェントモデルの時間発展に対する妥協戦略がシステマチックに定義することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自動交渉プロトコル(ルール)について、その複雑さやクラス分類などの考察が可能となった。エージェントモデルはプロトコルが定義されてから作成されるが、プロトコルの変化によってモデルが対応可能か否かはわかっていない。プロトコルの分類がなされることでエージェントモデリングやその推定法も検討が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
代表的なプロトコルは自動交渉プラットフォームで実装されているが、プロトコルの変更は自動交渉シミュレーションを作成する必要がある。今後は形式言語的なプロトコルの分類を進め、交渉の問題に適したプロトコルが作成可能な方法論を確立していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続きCOVID19の影響により参加を予定していた国内研究会、国際会議および研究打ち合わせのすべてがオンライン開催になり旅費がかからなかったため。またシミュ レーション専用計算機もテレワーク推奨により使用機会が失われるため購入を見合わせた。 これらに関しては来年度以降の学会・打ち合わせの旅費として利用、また持ち出し可能なスペックの計算機購入による規模を抑えたシミュレーション実証に変更などを検討し使用する予定。
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