解が離散値で表現される離散問題に対する進化計算によるサイマルテニアス最適化について取り組んだ.複数の相関のある目的関数を有するテスト離散問題として,CMNK景観問題を利用した.CMNK景観問題は,相関行列Cで目的関数間の相関を表し,Mで目的関数の数を任意に設定できる.解は,0/1のバイナリベクトルであり,Kによって解の要素間の依存関係を設定できる.これまでに連続問題で構築してきた目的関数のあいだの類似度を計測する方法は,CMNK景観問題にそのまま利用できない.離散問題に対して,目的関数のあいだの類似度を,探索の過程で計測する方法について検討し,各目的関数を担当する解集合間の変数値多様性をハミング距離に基づく手段で計測する方法を提案した.また,目的関数のあいだの類似度にあわせて,確率的に最適化の協力関係を構築する方法を提案した.具体的には,進化計算において,新しい解を生成する交叉には,複数の解を組み合わせる必要があるが,類似度が高い目的関数を担当する複数の解を組み合わせるように促す方法を構築した.また,類似度を探索に利用する度合いは,パラメータで制御可能にした.CMNK景観問題を用いた実験から,提案法は,従来の単一目的最適化する進化計算を逐次実行する方法,進化計算による多因子最適化法であるMFEA(Multi-factorial Evolutionary Algorithm)と比較して,類似度を探索に利用する度合いを調整することで,最適化性能を改善することなどを明らかにした.
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