研究課題/領域番号 |
19K12148
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研究機関 | 一般財団法人ファジィシステム研究所 |
研究代表者 |
玄 光男 一般財団法人ファジィシステム研究所, 研究部, 特別研究員 (20095003)
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研究分担者 |
川上 浩司 京都大学, 情報学研究科, 特定教授 (90214600)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 進化算法(EA) / 差分進化法(DE) / 機械学習 / 協調的共進化計算法 / 生産計画・スケジューリング / 持続可能な物流とリバース・ロジスティクス |
研究実績の概要 |
一般に半導体の各種部品の生産工程は実時間内のスケジューリング問題であり,特に各種素子は所定の制約時間内での処理の必然性から,制約時間内で処理できないときには不良品となり,生産効率に影響を及ぼす。本研究の目的は先端的進化計算と機械学習をベースにした高速スケジューリング算法を開発し,生産・物流システムの最適化問題へ応用することである。 1.フレキシブルジョブショップスケジューリング問題(FJSP)の調査分析: 半導体素子,液晶デバイス(TFT LCD),ハードディスク(HDD)等の各種部品の生産工程は,一般にFJSPモデルの拡張版である.また不確定なデータを伴うファジィFJSPの研究動向を調査分析し,国際会議で発表した(ICAART-2021)。 2.多目的進化算法(MoGA)と機械学習のハイブリッド型進化算法:処理速度を上げるためにGPUユニット搭載のPC環境下で学習ベースの突然変異を組み併せた並列型多目的進化算法(MoEA-HSS)を開発し,列車運行問題に応用した研究を国際会議で発表した(ICMSEM-2020)。 3.複数モード資源制約付きプロジェクト問題:これは非常時等に対処する施設や工場拡張に伴う計画・実施のスケジューリングとして定式化される。本研究では各種アクティブが不確定で三角ファジィ数によってモデルを定式化し,協調共進化算法(COEA)を活用し,Lin-Genの相互適応型GAとセルフ適応分割法を組み併せた多目的進化計算法を開発した。事例研究はプレハブ施設構築例で従来手法と提案手法の性能評価を行い,有効性を明らかにした(C&IE-2021)。 4.再使用・再生産・リサイクルの閉ループSCモデル:これは統合した持続可能なロジスティクスの事例研究に,ハイブリッド型HGAとPSOを組み併せた先端的進化算法を活用した研究論文を国際誌に掲載した(C&IE-2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ハイブリッド協調共進化算法の開発とその応用研究: 近年,高速処理を要するスケジューリング問題は,GPUユニットを組み込んだPC環境上で協調共進化算法(COEC)のような先端的進化算法の開発が要求されている。本研究では協調共進化GAとセルフ適応分割法を組み合せたハイブリッド型協調共進化算法にファジィロジックコントローラー(FLC)を組み込んた計算法を開発し,最適スケジューリング問題に関する研究を行なった。 2.多段型多目的進化アルゴリズムの開発: 進化過程を促進させるために多目的進化アルゴリズムを開発し,フローショップスケジューリング問題で提案手法を実証する研究である。第1段階ではハイブリッドサンプリング法をベースにしたファースト進化算法(HSS-FEA)によってPareto最適解候補を多方向へ分散させ,第2~3段階ではそれぞれHSS-FEAの使用頻度を減らし,進化収束を早めるためにDE活用を促進させることによって,Pareto最適解候補からベスト最良解を決定し,有効性の研究開発を実施した。 3.不確定なデータのフレキシブル・ジョブショップ・スケジューリング問題(FJSP)への応用研究: 生産・物流システムの製造・配送過程で発生する不確実的要因を確率分布で表わし,数理モデルを定式化し,実践的応用研究を総括評価し,確率的なスケジューリング問題を解くために効率的な多目的進化算法の研究を行っている。 4.持続可能な物流問題への応用研究: リバース・ロジスティクスや閉ループ型サプライチェーンモデル等の持続可能な物流のネットワークモデルに関する研究が注目されており,HGAとPSOを組み合せた先端的進化算法を開発し,再使用・再生産・リサイクルの閉ループネットワークモデルを統合した持続可能なロジスティクスの事例研究を開発した。
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今後の研究の推進方策 |
1.ハイブリッド多段型多目的進化アルゴリズムの開発: 進化過程を促進させるために3段階からなるハイブリッド多段型の多目的進化アルゴリズムを開発し,フローショップスケジューリング問題で提案手法を実証する事である。すなわち,第1段階では筆者等が開発したハイブリッドサンプリング法をベースにしたファースト進化算法(HSS-FEA)によってPareto最適解候補を多方向へ分散させ,第2段階ではHSS-FEAの使用頻度を減らし,また進化収束を早めるためにDE活用を促進させる。第3段階ではHSS-FEAの使用頻度を更に減らし,DEの促進を増加させて収束効果よりも分散効果を実行させることによって,Pareto最適解候補からベスト最良解を決定し,提案手法を評価する計画である。 2.不確定なデータのフレキシブル・ジョブショップ・スケジューリング問題(FJSP)への応用研究: 生産・物流システムの製造・配送過程で発生する不確実的要因を確率分布で表わし,数理計画モデルを定式化し,ハイブリッド型進化算法による実践的な応用研究を総括評価する研究を進める。 3.持続可能な開発目標(SDGs)に伴う物流問題への応用研究: 国際連合(UN)でも地球温暖化対策や環境保護活動の普及啓蒙に伴い,企業価値創出や競争力を高めるためのリサイクルとしてのリバース・ロジスティクス(RL)や閉ループ型サプライチェーン(CLSC)モデル等を反映した持続可能な物流(Sustainable Logistics)のネットワークモデルに関するが研究が注目されている。SDGに関連する本研究では,ハイブリッド型HGAとPSOを組み合せた先端的進化算法を開発して,再使用・再生産・リサイクルの閉ループネットワークモデルを統合した持続可能なロジスティクス問題に関する事例研究を開発する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年12月頃から中国で発生した新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が,日本国内にも2020年2月頃から感染の兆候が表れ,今日に至っている。 2020年度は国内外のあらゆる会議や研究会開催が中止となり,国際会議への出張に伴う旅費は主に登録費や物品費だけで,所属先訪問もCOVID-19の影響によりオンライン会議となった。繰り越した予算は、令和3年度に学会発表の旅費等で使用する予定である。
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