研究課題/領域番号 |
19K12150
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
早川 美徳 東北大学, データ駆動科学・AI教育研究センター, 教授 (20218556)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 群れ / 集団動力学 / トラッキング / 因果律 |
研究実績の概要 |
研究年度の2年目は、前年度に引き続き開発を進めているステレオカメラによる三次元計測システムを用い、宮城県北部の渡り鳥の越冬地においてガン・カモ類を対象した群れ飛行の実測を行った。今季は積雪等の影響で例年と塒や採餌場所が大きく異なったため、データを取得できたのは3日間のみとなった。カメラから概ね200m程度の範囲の複数の群れについて1/60秒の時間分解能で個体毎の軌跡を取得すると共に、風速・風向、鳴き声や周囲の環境の状況についても記録を行った。 本研究では多数の個体から構成される群れにおいて、個体間の運動の変化の詳細な解析を通じて、群れ全体としての制御の機序を明らかにすることを目的としているため、それぞれの運動を髙い精度で長時間追跡することが必要であり、それを実現するための技術開発を継続的に実施している。この年度は、野外計測で取得済みの多数の画像から学習データを生成し、畳み込みニューラルネットワークを用いて、画像上での各個体の位置を判定するアルゴリズムを開発・実装し、格段に誤検知を減らすことに成功した。個体位置の推定には誤差が伴うため、その微分量である速度や加速度には大きな揺らぎが生じ、それが個体間の相互作用の見積もりを困難にしていたが、新たにカルマンフィルターや粒子フィルターを用いた手法を導入することで、加減速についても、データの信頼幅を含んだ推定が可能となった。さらに、羽ばたきの様子の画像から粒子フィルターによる手法によって位相を推定する方法を新たに開発し、羽ばたきの同期現象を解析できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
マガン等の群れの各個体の軌跡および羽ばたき運動を正確に計測する手法の開発は概ね順調に進んでいるが、2020年度末ころからの大雪と寒波の影響で渡り鳥の行動が例年とは変わり、既に選定してあった観測地で、十分な量のデータを取得することができなかった。また、コロナ禍の中で所属大学のオンライン授業支援業務の担当となり、当初予定していたエフォートを研究に割くことが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度は、継続してフィールド計測によりデータの蓄積を進めると共に、平行して、これまで開発したアルゴリズムを用いてデータの分析を進め、群れの中の個体の運動の諸相について、転送エントロピー等の情報理論、およびConvergent Cross Mapping法等による力学系理論に基づく手法を用いながら、本研究の目的である群れの多体的な制御の機序について定量的な特徴づけと記述を行い、その成果を公表する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍下での大学のオンライン授業支援業務の担当となり、業務が多忙となったこと、および、研究に当初予定していたエフォートを割くことが出来ない状況であったこと、および、冬季の大雪のためフィールド計測の機会が著しく減少したため、当初予定していた機材や旅費に残額が生じた。次年度使用額は、データ解析用に購入を予定していたGPU付計算機の性能向上等に充てる予定である。
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