研究課題/領域番号 |
19K12156
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
實松 豊 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (60336063)
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研究分担者 |
篠原 克寿 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (50740429)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マシンタイプ通信 / アナログ・ディジタル変換器 / スパース符号多元接続 / 疑似乱数生成 / 情報理論的セキュリティ / 物理層セキュリティ / 力学系理論 |
研究実績の概要 |
マシンタイプ通信のための超低消費電力の無線機器による多元接続の実現に必要な諸問題に取り組んでいる.研究遂行のため,以下の3つの小テーマに取り組んだ. 小テーマ①では,黄金比変換器(Golden Ratio Encoder) を利用した乱数生成法に関し,力学系の立場から解析を行った.GREの動作に基づく2次元力学系に対し,従来明らかでなかった不変領域(invariant region)を厳密に解析した.幅広いパラメータに対し,不変領域を完全に特定した.パラメータを含む2次元力学系に対する非自明な不変領域の特定は力学系理論上の意義がある.この結果を,非線形科学の論文誌 Nonlinear Theory and Its Applications に投稿した. 小テーマ②では,コセット符号化を利用した無線通信路上の盗聴対策を研究した.盗聴者に漏れる情報量の新たな評価方法として条件付き情報漏洩量という概念を提唱し,当時修士課程学生であった道脇君を筆頭著者として,2018年の情報理論とその応用シンポジウムで発表していたが,その内容が認められ道脇君がSITA若手研究者論文賞を受賞した.2019年度は紙面の都合で掲載されていなかった証明や数値シミュレーションを増強した論文を英文論文誌に投稿した. 小テーマ③では,スパース重ね合わせ符号(SSC)を用いた多元接続方式を研究した.SSCを用いて多元接続が実現できることは,Venkataramananらによって指摘されていたが無線通信,特にフェージング通信路における性能調査が十分でなかった.調査の結果,フェージング通信路でも良好なビット誤り率を達成できることが分かった.この結果を,国内会議で公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した3つの小テーマについてそれぞれ進展が見られた. 特に①は,不変領域を簡潔に記述することが出来,今後の乱数の品質の解析につなげることが出来る.
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今後の研究の推進方策 |
小テーマ①に関して,前年度に得られた結果を利用して,GRE出力の2進ビット列の確率分布を解析する.これにより,パラメータのゆらぎによる乱数の偏りを補償することができると期待できる. 小テーマ②コセット符号化を利用した盗聴対策では,情報漏洩量のための計算量削減に取り組む.小テーマ③では,SSCの復号器には従来,圧縮センシングに基づいた反復復号を利用していたが,最近,九州大学の竹内純一教授らは,深層学習を用いることでビット誤り率特性を改善できることを明らかにした.我々の検討するSSCに基づく多元接続でも深層学習を利用することによりビット誤り率が改善できると考えられる.さらに小テーマ②と小テーマ③を融合し,スパース重ね合わせ符号にコセット符号化を施したシステムを提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
5月に予定していた国内出張が,研究代表者の不慮の怪我のため取り消しとなった. また年度末に予定した学会出張,および研究打ち合わせが新型コロナウイルスの影響で取りやめになった.
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