研究実績の概要 |
小テーマ(1) 閾値(θ)の揺らぎと増幅率(α)の揺らぎを有する黄金比符号化器 (GRE) の動作を記述する漸化式(差分方程式)に対する、θとαがある現実的な範囲に存在する場合の不変集合を明らかにした。また、この不変集合に基づく平均二乗量子化誤差の理論式を導出した。この結果は、論文誌 Nonlinear Theory and Its Applications, IEICE に掲載された(2021年)。 小テーマ(2) コセット符号化による耐盗聴のための符号化法と、小テーマ(3)スパース重ね合わせ符号法を組み合わせた符号化方式を研究した。盗聴者の盗聴能力(すなわち盗聴通信路)に対する仮定として、送信ビットがランダムに漏れるようなモデルとnビット中のkビット(どのビットが漏れるかがランダム)が漏洩するようなモデルがあり、いずれの場合もランダム性がある。ランダムに漏洩する場合は、ごく小さい確率で数ビットだけ漏れることになる。誤り訂正符号の能力の測定では数値実験を行うことで、何ビット送信できたのかは答え合わせをすることが出来る。一方、情報理論的安全性基準は、計算機能力を仮定せず、無限の計算資源があったとしても解読不可能であることが要求される。従来は、情報理論的安全性を評価するには、しらみつぶし(総当り)法よりも効率的に計算することが出来なかった。研究代表者は、過去に「条件付き情報漏洩量」という新しい考えを導入することで、漏洩しうるビット数の確率分布を効率的に計算できることを明らかにしていた。本研究では、この計算法を、コセット符号化にスパース重ね合わせ符号を組み合わせた場合に拡張することを目指した。しかし,検討した方法はいずれも情報漏洩量を求める演算量が大幅に増加するという結果を得た.この検討結果を,国内研究会において発表した。
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