研究課題/領域番号 |
19K12158
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
常田 明夫 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (40274493)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カオス理論 / ランダム技術 / 乱数 |
研究実績の概要 |
本研究は、カオス理論に基づいた乱数や符号系列を種々の「ランダム技術」へ応用し、既存技術の性能向上やカオス理論の新しい応用の創成を目指すものである。ここで「ランダム技術」とは、モンテカルロ法、LDPC 符号、圧縮センシング、CDMA 通信、データ解析など、乱数系列やランダム行列等の確率的性質(ランダム性)を利用する技術を指す。カオスは、単純な決定論的システムからランダム現象を生み出すものであるが、いかなるランダム性を生じるかは、用いる決定論的システムに依存し、そのシステムの特性を理論的に把握することで、種々のランダム性を事前に設計することも可能である。また「ランダム技術」において、いかなるランダム性が有効であるかは、応用ターゲットによっても異なる。したがって、カオス理論を有効に活用するには、各応用において、いかなるランダム性が有効であるかを検証し、それに応じたランダム性の設計・実現が重要である。本研究では、いくつかの「ランダム技術」において、いかなるランダム性が有効であるかを検証し、カオス理論の活用可能性を探る基礎的検討を行う。 1.可視光CDMA通信への応用:カメラ通信を想定したCDMA通信のシミュレーションを行い、負相関スペクトル拡散符号が有効であることを確認した。 2.ストカスティックコンピューティングの応用:カオス2値系列のストカスティックコンピューティングへの応用を試みた。ANDゲートによる乗算について、入力するカオス2値系列の自己相関特性が演算結果の収束特性に影響を与えることを明らかにした。 3.モンテカルロ積分への応用:カオス系列を用いたモンテカルロ積分の真値への収束特性について検討した。被積分関数に大きく依存するものの、負相関をもつカオス系列を用いた場合が収束を早くする傾向があることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス対応など学内業務が繁忙となり、研究に費やす時間が大幅に減ってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究成果を踏まえ、以下の研究を進めていく。 1.深層学習への応用:MNISTデータの深層学習において、重みの初期分布の与え方などに着目し、分布や相関性の違いによりどのように正答率が変化するかについて検討する。 2.非周期乱数生成:モンテカルロ法への利用を想定し、様々な自己相関特性をもつ乱数の実現を目指す。まず、2つのマルコフ2値系列を用いて新たな2値系列を生成し、どのような自己相関特性をもつかについて調べる。 3.ステガノグラフィへの応用:非線形フィードバックシフトレジスタ系列に基づいた2値直交行列による直交変換(ドブルイン変換)を用いたステガノグラフィについて、よく知られている直交変換のアダマール変換との組み合わせも含め、いくつかの方法を検討する。ここで、両変換の特徴についても詳細に検討し、復元画像への影響などについても調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内出張は3回行うことができたものの、やはり当初予定していた出張旅費や学会参加費の支出が非常に少なかった。また、新型コロナウィルス対応などの学内業務が繁忙となり、研究に費やす時間が大幅に減り、購入予定の装置を選定するにも至らなかった。次年度は、さらに研究を進めるとともに、積極的に学会発表(および可能なら出張)を行い、本研究課題の遅れを取り戻したい。
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