1.最終年度に実施した研究の成果 1-1.カオス理論に基づいた乱数生成:2つのカオス2値系列を組み合わせて新たな2値系列を生成する方法を提案し、その自己相関特性を調査した。その結果、単一のカオス写像と単一の2値関数の組合せでは実現できない様々な自己相関特性をもつ2値系列が生成可能であることを明らかにした。ただし、理論的な評価が難しいことも確認され、今後の課題となった。 1-2.カオス乱数を利用したモンテカルロ積分:モンテカルロ積分は用いる乱数の自己相関特性によって収束の速さが変化するため、乱数の自己相関特性を容易に制御できるカオス乱数の利用を試みた。ここで一様分布のカオス乱数を生成するテント写像を用い、そのパラメータを変えて様々な自己相関特性のカオス乱数を生成し、これを用いてモンテカルロ積分を行った。その結果、パラメータによってモンテカルロ積分の精度が変化することが明らかになった。また、積分区間を分割することで解の精度が向上することも明らかにした。
2.研究期間全体を通じて実施した研究の成果 本研究は、カオス理論に基づいた乱数や符号系列を種々の「ランダム技術」へ応用し、既存技術の性能向上やカオス理論の新しい応用の創成を目指すものであった。研究期間全体を通じて、カオス理論に基づいた乱数生成とその応用(モンテカルロ積分、機械学習、ステガノグラフィ、可視光CDMA通信、ストカスティックコンピューティング)について検討し、様々な自己相関特性のカオス乱数が生成可能であること、また応用については適切な自己相関特性を選択することで、性能向上が可能であることを明らかにした。
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