研究課題/領域番号 |
19K12159
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
能島 裕介 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10382235)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 知識獲得 / 進化型機械学習 / 解釈可能性 |
研究実績の概要 |
本年度,ルール集合に基づく知識獲得手法を中心に解釈可能性に関する議論として以下の研究を行った. (1)マルチラベル識別問題における精度最大化(誤差最小化)と解釈可能性最大化(複雑性最小化)を同時に行う進化型多目的知識獲得手法を提案した.数値実験により,既存のマルチラベル識別器において同等の性能と高い解釈可能性を確認した.また,マルチラベル識別問題の評価尺度として代表的な3つの指標を同時に最適化する多数目的最適化による定式化法を提案し有効性を検証した. (2)クラス不均衡データに対するファジィルールに基づく識別器設計を提案した.クラス不均衡に対応するために4つの拡張を検討した.1.ルール評価関数に対する重み付け,2.ルール集合の評価指標,3.ヒューリスティックルール生成におけるベースパターン選択,4.ルール後件部の設定.これら4つの拡張の組合せ効果を検証した. (3)進化型多目的最適化による多目的知識獲得において,等間隔のファジィ集合や区間集合,データの分布に合わせた非均等分割のファジィ集合や区間集合などを同時に条件の候補として最適化を行い,属性ごとに適した集合がどの程度偏るかを調査した. (4)確信度の低い識別結果を識別拒否し,確信度の高い識別結果のみを高精度で出力できる識別器の開発を行った.識別拒否を判断するしきい値の設定方法として,クラス単位とルール単位を検討し山登り手法による閾値の設定方法を実装した.多数のデータを用いた数値実験から,クラス単位の識別拒否の方が有効であることを確認した.また,一旦識別拒否判定された入力を再度別の識別器で評価するセカンドオピニオン機能の検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精度と解釈可能性を考慮した識別器設計として,マルチラベル識別問題とクラス不均衡識別問題に対するアルゴリズムの開発では一定の成果・評価が得られたと考えられる.どちらも和文論文誌にて論文が掲載された.また,マルチラベル識別問題に関するファジィ識別器設計に関しては,ファジィシステムに関するトップカンファレンスであるFUZZ-IEEE2020において,Best Student Paper Awardにも選ばれている. また,研究実績概要に記載した(3)と(4)に関しては,数値実験を通してこれまでに明らかになったことに関して,関連する国内および国際会議にて発表する予定である. 全体的に概ね順調に進展していると言えると思うが,2020年度に実施予定だった深層学習器からの出力情報を用いた知識獲得に関しては,あまり進展が得られていない.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策はそれぞれ以下を考えている. (1)多目的進化型機械学習手法の汎用化・ライブラリ化.ファジィルール集合に基づく多目的知識獲得手法の一部は現在プログラムを公開しているが,必ずしも使いやすいものではない.そのため,プログラムの汎用性を高めてライブラリ化することで,多くの人に利用可能なコードを提供できるよう整備する予定である. (2)複数種類の条件部集合を用いたルールに基づく多目的知識獲得において,条件部集合の増大による組合せの膨大さから最適化が困難であることは明白であり,その改善方法として2段階の最適化方法を検討する.具体的には,1段階目で複数種類の条件部集合を同時に用いて知識獲得を行う.2段階目に,得られた識別器の各属性で高頻度に使われた条件部集合のみを用いて再度最適化を行う方法を検討する. (3)識別拒否を導入したファジィ遺伝的機械学習において,山登り手法と進化計算を用いた閾値設定方法の比較を行う.またセカンドオピニオン機能の精度向上を試み,識別拒否パターン数を増やさずに精度を向上させる方法を検討する.また,ファジィ識別器のみならず,一般的な機械学習への展開も検討する. (4)2020年度に進展がなかった深層学習器からの出力情報を用いた知識獲得に関しては,引き続き,相関ルールマイニングにおいて条件部集合の違いによる影響を調査する.また,深層学習器の学習に用いたデータとは異なるクラス情報を持つデータを出力とする識別器設計を行い,他のクラス情報を用いた相対的な表現がどの程度可能か検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で出張が行えず旅費として使用することがなかった.また,新型コロナウイルス感染リスクを避けるため非常勤の雇用は控えたことにより未使用学が生じた. 2021年度は,新型コロナウイルス感染状況を見つつ可能な範囲で非常勤の雇用を行う予定である.また,旅費としての支出は2021年度もほとんど無いことが考えられるため,論文掲載費やオンラインで開催される国際会議への参加費などに当てる予定である.
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