研究課題/領域番号 |
19K12162
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
佐藤 裕二 法政大学, 情報科学部, 教授 (20328909)
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研究分担者 |
廣津 登志夫 法政大学, 情報科学部, 教授 (10378268)
宮川 みなみ 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (40793964)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Distributed NSGA-II / Divide-and-conquer / Distributed MOEA/D / Virtual overlapping zone / Reference Point |
研究実績の概要 |
(1) パレート優劣関係に基づく手法であるNSGA-IIに関して、個体を各CPU上に分散してNSGA-IIを並列実行させ、それぞれ非劣解集合(ランク1)を得て、それら全ての非劣解集合を適当な頻度で集約して再度ランク付け処理を行う補正処理を提案しHyper Volume (HV: 解の精度を評価する指標)値の向上に繋がること、また探索過程でのパレートフロントの両端の非劣解を全てのコアCPUで共有する移住方式を提案し解の多様性(パレートフロントの両端の広がり)および均一な解分布能力向上に有効であることを示していたが、新たに、劣解(ランク1以外の解)から構成されるパレートフロントの端の解の活用が、並列化を行わない単一CPUの場合でも、解分布の多様性の向上や均一な解分布能力向上に繋がる可能性があることを示し国際会議で発表した。 (2) 重みベクトルによるスカラー化関数に基づく手法であるMOEA/Dに関して、目的関数空間を分割し複数のコアに割り当てる並列化を(GPUなどの)メニーコア環境で行った場合のコア境界付近での解精度の低下を抑制するために、目的関数空間を分割する境界領域にVirtual overlapping zoneを設けて探索精度の向上を図る手法を2目的最適化問題に対して提案して国際会議で発表していたが、新たに、各コアで情報共有の必要があるReference Pointを、コア間で補正するための情報共有間隔を適応的に変化させることで、コア間の境界付近で解分布が疎になる現象を早期に改善する効果があり、また収束性に関しては単一CPUと同程度を維持したまま、多様性に関して向上する実験結果を得てIEEE主催の国際会議に投稿して採択された。 (3) データ通信によるオーバーヘッドを削減するために、コア間の通信を行わないMOEA/Dの並列化法の新たな方式を検討し、研究会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パレート優劣関係に基づく手法であるNSGA-IIに関して、並列分散環境において、分割統治法を参考にした階層型非支配ソート、および探索過程でのパレートフロントの両端の非劣解を全てのコアCPUで共有する移住方式により、解の多様性(パレートフロントの両端の広がり)および均一な解分布能力向上のために有効であることを示していたが、更に、評価値の高い実行不可能解を利用した解探索における収束性向上のアイデアを加え、多様性とパレートフロントへの収束能力を兼ね備えたアルゴリズムを考案したがプログラムのバグにより、当初の計画と比べてジャーナルへの投稿が遅れている。 重みベクトルによるスカラー化関数に基づく手法であるMOEA/Dに関しては、目的関数空間を分割して複数のコアに割り当てる並列化を(GPUなどの)メニーコア環境で行った場合の解精度の低下を抑制するための手法を2目的最適化問題に対して提案し、更に、Reference Pointをコア間で補正するための情報共有間隔を適応的に変化させる手法を提案し、最終的に得られるパレートフロントが、収束性に関しては単一CPUと同程度を維持したまま、多様性に関しては向上する実験結果を得た。 更に、データ通信によるオーバーヘッドを削減するために、Reference Pointの設定をコア間の情報共有なしに、各コアで独立に推定する手法の検討を開始し、幾つかのアイデアを発案して一部実験を開始した。NSGA-IIの並列化に関してジャーナルへの投稿が当初計画から遅れているが、改訂版をジャーナルに投稿する誘いを幾つかの出版社から得ており、バグ対策を済ませ、できるだけ早期に投稿を完了する予定である。ジャーナル投稿は当初の計画から遅れているが、一方で、当初の計画にはない新しいアイデアの提案もあり、研究自体は概ね計画通りに進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) パレート優劣関係に基づく手法であるNSGA-IIに関しては、これまでの研究内容に加えて、実行不可能解の中で評価値の高い解を親個体の候補として利用するアイデアを活用した解探索における収束性向上の機能強化を加えたプログラムに一部バグが見つかり対策中である。早急にバグの修正を行って評価実験を行い、ジャーナルへの投稿を行う。 (2) 重みベクトルによるスカラー化関数に基づく手法であるMOEA/Dに関しては、Reference Pointをコア間で補正するための情報共有間隔を適応的に変化させる手法を加えた評価をより詳細に行い、2021年度中にジャーナルへの投稿を行う。また、2019年度に提案した目的関数空間を分割する境界領域にVirtual overlapping zoneを設けて探索精度の向上を図るアイデアを3目的最適化問題に拡張するための具体的な方法を提案する。更に、コア間の通信を行わないMOEA/Dの並列化法に関して、より詳細な評価を行い有効なアイデアを検討する。 (3) NSGA-IIとMOEA/Dに関するアイデアに関してジャーナルへの投稿が完了した後、実問題を用いた有効性の再確認および対策を行う。NSGA-IIIはNSGA-IIやMOEA/Dと共通するアルゴリズム部分を含むと考え、まずNSGA-IIやMOEA/Dで提案した並列化法をNSGA-IIIに適用した場合の有効性の確認と問題点の洗い出しを行う。次にその結果を基に、異なる並列化法の要素を融合させるための新たな技術の提案を行う。更に、「複数車種の同時最適化のためのデータ」などの実問題を用いた評価実験から、移住などのタイミングを利用して、共通部分を検出しながら有効活用して、高速に同時最適化する技術を探り、更なる精度向上に繋げる。また、国際会議でのスペシャルセッションの提案などを通して研究成果の広報に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、参加予定であった国際会議および国内会議が全てWeb開催(または中止)となり予定していた旅費を執行できなかったこと、および一部の評価実験用のプログラムのバグ対策が完了せずに、予定していた謝金を使った学生(研究協力者)の評価実験作業が延期となったために次年度使用額が生じました。 今回生じた次年度使用額に関しては、2021年度の学会活動費(論文誌投稿費用、学会参加費など)あるいは謝金のための費用として活用する予定です。
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