研究課題/領域番号 |
19K12163
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研究機関 | 湘南工科大学 |
研究代表者 |
佐々木 智志 湘南工科大学, 工学部, 講師 (00811415)
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研究分担者 |
中野 秀洋 東京都市大学, 情報工学部, 教授 (10386360)
神野 健哉 東京都市大学, 情報工学部, 教授 (50286762)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 群知能最適化 / 非線形最適化 / スパイク発振器 / 決定論的手法 / 群知能回路 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究において、確率的な要素を排除した決定論的な群知能最適化手法を2つ提案した。具体的には、(1) 1次元の非線形マップに基づく手法、(2) スパイク発振器の結合系に基づく手法である。これらの最適化手法では、最適化問題の解を探索する各探索個体に非同期的なカオスダイナミクスを取り入れることによって確率変数を有する既存の最適化手法のように複雑なダイナミクスを持つ。各探索個体の状態変数は、各時刻において自身が持つ位置、最良解などの情報に基づいて決定論的に更新される。(1)の手法では、1次元の非線形マップにより生成されるカオスに基づいて状態変数が更新される点が特徴的である。特に、各探索個体は探索空間上に発見した最良解付近を重点的に探索することができる。本手法において、探索個体の探索戦略と探索性能の調査を様々なベンチマーク問題を対象として数値実験を行った。探索個体は探索空間上の勾配に沿って探索することを確認し、単峰性の探索空間の形状を有する最適化問題に対して高精度な解を求めることを明らかにした。(2)の手法では、探索空間の1次元の探索を1つのスパイク発振器に基づく探索個体で探索させ、他次元の探索個体と相互に結合させる。パラメータによって同期的・非同期的な探索軌道の制御ができるところに特徴がある。2次元の探索空間を対象とした2つの探索個体を相互結合させた場合には、パラメータによって探索空間上の局所的な領域を探索できる同期的な軌道と大域的に探索できる非同期的な軌道を制御できることを明らかにした。 今後は提案した決定論的群知能最適化手法のモデルの改良と探索性能の評価および探索ダイナミクスの解析を行い、群知能回路の設計と開発を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では、決定論的な群知能最適化手法のモデルの実現を目標としていた。当初の研究計画では、スパイク発振器の結合系に基づくカオス的なダイナミクスを取り入れた手法のモデルを開発することを予定していたが、非線形マップに基づいたカオス的なダイナミクスに基づく手法も提案することができ、その探索性能の有効性も確認できている。当初の計画のスパイク発振器を用いた手法とは異なる仕組みではあるが、簡素な仕組みで高精度な解を求めることが可能な群知能最適化手法のモデルの開発は順調に進んでいるといえ、目標はおおむね達成できているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、決定論的な群知能最適化手法のモデルの開発を行う。前年度の研究成果から得られた知見や従来研究に基づいて、探索手法によって求められる解精度の向上のための改良や回路化に向けたモデルの構造の簡単化について検討する。改良したモデルの探索性能は既存の群知能最適化手法を対象として様々なベンチマーク問題を用いて比較を行い、有効性を明らかにする。また、探索モデルのパラメータ条件による探索個体の探索軌道について解析を行い、高精度な解を探索可能なパラメータ設定条件を明らかにする。さらに、改良モデルのディジタル回路設計と実装を行い、その回路規模の評価とベンチマーク問題に対する性能評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の研究では、決定論的な群知能最適化手法の有効なモデル構築を行うことを研究内容としており、モデルの検討や数値実験を優先して進めていた。このため、回路実装のための設計や回路規模の見積もりが当初の予定より遅れてしまい、回路開発のためのソフトウェアやFPGAボードの選定が遅れた。
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