研究課題/領域番号 |
19K12165
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
坪 泰宏 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (40384721)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 脳神経科学 / 確率型情報処理 / タッピング / 事象関連電位 |
研究実績の概要 |
本研究では,最終目標である「機械的な情報処理と人間の行動レベルの情報処理のズレを,新しい神経回路の機能を探るためのヒントとして,理論神経科学的な観点から調べ直すことにより神経回路における制約条件を提案すること」を目指して,課題1「周期的感覚刺激に対するタッピング運動のマクロスコピックなモデル化」,課題2「確率的モデル構築のための行動・脳波計測実験」,課題3「マクロスコピックなモデル化を実現するためのミクロスコピックなモデル化」,を行う.初年度の2019年度は,まず課題1「周期的感覚刺激に対するタッピング運動のマクロスコピックなモデル化」について研究を進め,既に予備実験で得られていた「タッピングの精度が高い刺激ほどタッピングの正確度が低くなる」という結果について,刺激間隔の時間的不確定性を定量的に変化させる実験によって,結果が再現されること及び定量的な変化を確認した.さらに,この現象を説明しうる数理モデルを構築した.次に,課題2「確率的モデル構築のための行動・脳波計測実験」について研究を進め,刺激の確率的欠損を用いることで刺激提示そのものの存在不確定性を変化させた実験を行なった.結果として,刺激間隔の時間的不確定性の状況かとは異なる結果が得られた.以上より,不確定性の種類によって運動のバイアスと事象関連電位が異なることが示唆され,課題1のモデルを拡張する必要があることがわかった.また,その拡張には,刺激の存在確率を事前の刺激で教示した際に生じる運動バイアスと事象関連電位を計測する必要性が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は2つの課題を遂行する予定であった.課題1「周期的感覚刺激に対するタッピング運動のマクロスコピックなモデル化」については,当初の予定通り,従来の結果を確認した上で数理モデルの構築を行なったが,課題2「確率的モデル構築のための行動・脳波計測実験」で得られた,異なる不確定性の状況下での結果に基づき,モデルの拡張の必要性が生じた.また,事象関連電位との関係性も得られた.引き続き調査が必要であるが,おおむね順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
2年目の2020年度では,初年度の研究成果を踏まえて,下記の通り研究を実施する.まず, 課題1「周期的感覚刺激に対するタッピング運動のマクロスコピックなモデル化」について,2019年度に得ることができた数理モデルを,課題2で得られた実験結果をも説明しうるように拡張を行う.課題2「確率的モデル構築のための行動・脳波計測実験」について,異なるモダリティや異なる不確定性の種類によって,運動のバイアスと事象関連電位がどのように異なるのかについて,引き続き調査を行う.最後に,課題3「マクロスコピックなモデル化を実現するためのミクロスコピックなモデル化」については,マクロスコピックな運動のバイアスをミクロスコピックな神経回路を用いて表現する際に必要となる確率分布に関する条件の検討を開始する.なお,2020年度はコロナ禍による大学の研究施設使用制限に伴い,主に脳波計測実験を行う時間が大幅に減少することが想定される.上半期には2019年度に取得された脳波データのさらなる解析や数理モデリングの構築を中心に進め,下半期に集中して脳波実験を行う予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では,ドライ電極脳波計の購入を予定していたが,既存設備を工夫して利用することにより実行できたため.なお,利用を予定していた既存設備のノート型PCが故障したため,差額の一部でノート型PCを購入した.次年度使用額は,論文投稿費及び国際会議出張費として使用する計画である.
|