研究実績の概要 |
前年(2022)度の研究成果を国際会議AMAM2023で博士後期課程学生がポスタ発表し,Best Poster Presentation Awardを受賞した.さらに,構築した脊髄ネコのモデルを用いて,通常のスプリットベルト設定での脊髄ネコ・後二脚実験(Frigon 2017)の4脚ロボットでの再現を行い,対脚での遊脚期間短縮(CAS, Contralateral Adjustment of the Swing phase duration)の有効性を示した.さらに,低速スプリットベルト設定での1:2歩容(低速ベルト脚の1ステップサイクル内で,高速ベルト脚が2ステップサイクルを行う)を4脚ロボットで再現した.結果,複雑に見える歩容遷移が,脚・腰伸展と脚負荷を離地タイミング決定のためのセンサ情報として用いるだけの簡単な脊髄ネコ・モデルにより再現されることが示された.これらの結果は,第36回自律分散システム・シンポジウムにおいて博士後期課程学生により発表された. 研究期間全体として,視床ネコのスプリットベルト適応を「非線形力学系と環境との相互作用による運動創発」と捉え,構成論的モデルを脊髄・感覚運動モデルと小脳・学習モデルにより構成した.脊髄・感覚運動モデルを用いた実験結果を近年の脊髄ネコ・後二脚実験結果と比較することにより,モデルの妥当性が示された.一方,小脳・学習モデルは従来の漸化式を用いた歩幅調整に留まってしまったが,脊髄・感覚運動モデルの適応能力により視床ネコのスプリットベルト適応実験結果をある程度には,特にearly adaptation stageにおいては十分に再現することができた.
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