研究課題/領域番号 |
19K12175
|
研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
山崎 容次郎 香川高等専門学校, 機械工学科, 教授 (60259942)
|
研究分担者 |
逸見 知弘 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (00413849)
滝 康嘉 香川高等専門学校, 電子システム工学科, その他 (00455180)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 人形浄瑠璃 / 文楽ロボット / リマソン曲線 / 対数螺旋曲線 / 動作生成 / マクスウェル分布 / 予備動作 / バネ・ダンパーモデル |
研究実績の概要 |
過去に撮影した人形浄瑠璃の動画を観察し,渦を巻くような情緒的な動きに着目した。文楽ロボット左腕の動作生成に関して,美的曲線の一種であるインボリュート曲線や準美的曲線であるリマソン曲線(パスカルの蝸牛形)を実装し,媒介変数のプロファイルには余弦波を用いた。概ね実人形の動きを実現できたが,軌跡形状の評価ができないことや,速度特性がベル型にならないなどの問題が残った。これらの問題に対し,黄金螺旋に着目し,対数螺旋曲線を用いた動作生成を試みた。極座標表現で角度パラメータを媒介変数とし,マクスウェル分布を実装することにより,手先速度のプロファイルをベル型にすることができた。 次に,人形の頭と右腕,体幹,左腕の同期に着目した。2次元動画分析ソフトによる解析から,人形の視線変化と体感の上下動,右腕・左腕の動きが連動していること,螺旋的な動きに入る前の「予備動作」の存在を確認した。さらに仮想的なバネ・ダンパーモデルによる逐次起動生成によって,予備動作の速度プロファイルを実現できる見通しを得た。また,浄瑠璃人形の右手と左手では動きが異なっており,その原因の一端は構造の違いにあるものと推測した。そこで,本物の中古の浄瑠璃人形を購入し,特に左手の「差し金」の操作感に着目し,解析の準備を進めている。 さらに,徳島県立阿波十郎兵衛屋敷の定期公演の撮影,および関係者との打ち合わせを実施した。今後の協力体制を確認するとともに,文楽ロボットシステムの実地検証は次年度以降に再検討することとした。加えて,これまでの研究内容を報告し,意見交換から主遣いと左遣いの同期・連携について有益な情報を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
左腕で渦を巻くような動きや予備動作といった浄瑠璃人形独特の動きについては分析と実装が進んでいる。また,2次元動画解析ソフト,中古の浄瑠璃人形,文楽ロボット用サーボモータなどの物品購入は実施済みで,さらに,3次元モーションキャプチャー用のマーカーの購入も業者と検討するなど,次年度に向けた準備も進めている。一方で,研究協力者である稲見氏のご逝去に伴い研究計画の変更を迫られたこともあり,脚操作や移動のためのロボットについては設計製作を次年度以降に持ち越すことになった。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度に実施した演目「傾城阿波の鳴門」の調査や人形の分析により,これまでに報告された浄瑠璃人形の動きや完全自動の文楽ロボットにはあまり見られない動きが多く見受けられた。ダイナミックな動きとは異なる情緒豊かな動きに重点を置き,令和2年度は現在研究対象としている女児の人形「お鶴」に関してして,座っている状態で1分程度の演目を実現させたい。このため,(1)人形の頭と体幹のタイミング検出機構の開発,(2)もみじ手の動作機構の改良と制御手法の確立,(3)複数の曲線動作を接続した運動生成,に取り組んでいく。 なお,COVID-19の影響により,研究協力者の徳島県立阿波十郎兵衛屋敷や座(人形遣いのグループ)の協力は当分の間オンライン通信に限られるが,徳島県立阿波十郎兵衛屋敷の協力を仰ぎ,(a)初心者が一人で操作できる文楽ロボットを操作した動きに対して人形遣いの方からの評価や,(b)プロの人形遣いが操作した場合の観客の反応を,収集・分析・評価を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本課題研究が採択されてから,研究分担者の逸見知弘が香川高専から川崎医療福祉大学に転出し,所属機関が変わった。このため,新しい所属機関での教育・研究や校務に注力する必要が生じ,本課題研究に関しては,研究遂行に必要な解析ソフト等の購入に限られ多少の残額が残った。このことを踏まえ,同分担者に関しては,次年は購入した解析ソフトを利用しつつ,文楽ロボットの移動機構等の評価を実施予定である。
|