研究課題/領域番号 |
19K12179
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
阿山 みよし 宇都宮大学, オプティクス教育研究センター, 特任教授 (30251078)
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研究分担者 |
佐藤 美恵 宇都宮大学, 工学部, 教授 (00344903)
奥田 紫乃 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (60352035)
柳田 佳子 文化学園大学, 服装学部, 教授 (60409323)
石川 智治 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (90343186)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ファッションコーディネート / きちんと感 / こなれ感 / 好ましさ / デザイン要素 |
研究実績の概要 |
本研究は、上衣・下衣組み合せの「きちんと感」「こなれ感」「好ましさ」評価に注目し、これらの印象評価に、どの要素がどのように影響するのかを、実物衣服群と衣服画像群の印象評価実験に基づいて明らかにすることを目的とする。丈バランスとシルエットを変えた刺激群を製作し、年齢や専門の異なる被験者群で主観評価実験を行い、デザイン要素の影響、実物と画像に対する印象評価の共通点と相違点を分析する。 昨年度は製作した上衣と下衣の組み合わせをマネキンに着用させて実験室に並べ、評価実験を行った。被験者は女子学生と女性中高年者であった。しかし閉空間に同時に複数人が入室しての評価実験は、新型コロナウィルス感染拡大防止策の密室状況に抵触することと、非常事態宣言を受けての構内立ち入り制限期間があったこと、および高齢者の被験者実験は避けるべきと判断から、今年度は新たな被験者実験は行わなかった。そこで、今年度は画像での評価実験に向けての、製作した上衣と下衣を着用させて撮影し、アンケート用プログラムの作成を行った。予備的な実験としてのアンケート評価からは、実物実験と類似した傾向が得られたが、画像での評価の方が客観的な判断ができるとの意見も得られた。 またデザイン要素の1つである対比印象(コントラスト・インパクト)についてミニチュア衣服での評価実験から色と花柄サイズの多様な組み合わせにおける感性評価データを得ており、その詳細な分析を行った。「落ち着いた」「清楚な」「明るい(視覚的)」「地味な」「目立つ」の各感性評価語に対し,上衣と下衣の平均輝度,上衣の平均Cab*(メトリッククロマ),コントラスト・インパクトの3つを説明変数で重相関係数が0.8以上と良好に説明できる結果となった.これらの評価はきちんと感や好ましさ感とも関連し、服装分析やリコメンド等への知見となる。これらの研究成果を国内学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
閉空間に同時に複数人が入室しての評価実験は、新型コロナウィルス感染拡大防止策の密室状況に抵触することと、非常事態宣言を受けての構内立ち入り制限期間があったこと、および高齢者の被験者実験は避けるべきと判断から、今年度は新たな被験者実験は行わなかった。そこで、今年度は画像での評価実験に向けて、製作した上衣と下衣をマネキンに着用させて撮影し、その画像群を用いたアンケート用プログラムの試行版の作成および予備的データ収集としてwebでのアンケートを行った。 結果は、実物実験と同様に上衣の丈がウエスト位置である丈バランス1の条件で「きちんと感」「こなれ感」「好ましさ」の評価が高い値となった。いずれも昨年度の実物評価の結果とほぼ同等で、画像での評価と実物評価が定性的・定量的に一致する可能性が示唆された。「こなれ感」については実物での結果と同様ワイドパンツの方が評価が高い。今年度の課題の一つに、R1年度でウエストイン条件(丈バランス1)だけ上衣を少し引き出すブラウジングさせた着せ方だったので、その「こなれ感」への影響を検討することがあった。丈バランス1でブラウジング有りと無しで着用させた刺激条件間での比較から、下衣がストレートでもワイドでもブラウジング有の方が「こなれ感」評価は高くなった。これらからワイドパンツとブラウジングはこなれ感を演出する重要な要素であると示唆される。画像での評価の方が客観的な判断ができるとの意見も得られた。回答のしやすさデータの分析を基に本試行用のwebアンケート作成を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルス感染防止の観点から、今年度も閉空間での評価が必要な実物評価実験は実施しない。R2年度の実績から、画像評価が実物評価とあまり変わらないことが示されたので、今年度はwebアンケートを利用した画像評価実験を実施する。被験者群は工学系とファッション系と生活科学系の男女学生および高齢者女性群を想定している。丈バランスは等しくブラウジング有りと無しで着用させた刺激条件を加えており、様々な被験者群でブラウジングの影響を検討できる。また上衣と下衣の組み合わせのファッション画像を選択し、本研究で得られた「きちんと感」「こなれ感」「好ましさ」と上衣・下衣の丈バランスや幅比率が整合する画像を抽出し、ファッション画像の評価や服装リコメンドシステムへの基礎的データを得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
R2年度の中間的成果を国内学会(日本色彩学会全国大会および日本感性工学会年次大会)で発表したが、すべてオンライン学会であったので旅費を使用しなかった。また新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から実物衣服評価実験は実施しなかったので、被験者謝金を使用しなかったことと、マネキンレンタルは画像撮影のためだったので、レンタル料が当初予定より少なくて済んだ。以上の理由から次年度使用額が生じた。 R3年度はインターネットを活用しての画像評価実験を広く実施する予定で、webアンケート作成費に使用予定である。また信頼できるデータ収集のためには、実験者不在の状況でも真面目に画像を観察し判断してもらうことが必要で、そのための被験者謝金に使用予定である。成果を感性工学会、視覚基礎研究会での発表するための参加費に使用予定である。
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