視覚刺激に対する人間の高次の視覚認知判断が、視線の動きとどのように関係しているかを明らかにするため、人に視覚的な認知課題を行わせた際の視線の動きを視線追跡装置によって測定し、視線停留点の位置の推移に関して得られた時系列データの特性を、機械学習の一手法である隠れマルコフモデル(HMM)によって学習し、視線の動きから被験者の当該刺激に対する印象判断結果を予測することを目指す研究に引き続き取り組んだ。今年度は、顔画像刺激に対する魅力印象がポジティブ/ネガティブとなる群間での視線動作の比較を行った結果、前者に対しては顔画像内に幅広く分布する特定の領域に長く停留する局所的な視線動作を行っているのに対して、後者に対しては広範囲の領域を短時間で移動する大局的な視線動作を行う傾向があることなど、幾つかの新たな発見が得られた。 また、顔の3次元表象から人が認知することができる高次印象の具体的な事例として、表情、年齢、性別などに加えて、SD法や一対比較法によって数値化される「好感度」等の主観的情報も取り上げ、それらを物理的表象から自動推定するシステムの構築につながる基礎的な成果が得られた。 そして、被写体が発するカラー情報に加えて、対象までの奥行き情報も取得できるRGB-Dセンサを用いて取得される連続的な表情変化や身体動作を撮影した時系列画像にクラスタリング手法を適用することによって、特定の表情や身体姿勢に対応するキーフレームを抽出する手法についての基本的検討を開始することができた。 さらに、印象変換ベクトル法によって3次元顔の個人差に応じた自然な発話表情を生成する方法や、表情表出に伴う3次元顔の魅力度の視点依存性についての検討においても進展が得られた。
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