研究課題/領域番号 |
19K12196
|
研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
福本 誠 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (60422028)
|
研究分担者 |
花田 良子 関西大学, システム理工学部, 准教授 (30511711)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 対話型進化計算 / 飲料生成 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,複数ユーザに共通して好まれる味を作り出す技術を確立するものであり,遠隔地にいる複数ユーザが参加しながら共通の最適解としての味を探索することに特長がある.2020年度は,主に2名のユーザが参加可能な手法の開発に取り組んだ.また,飲料のもととなるジュースの抽出量の調整に不安定な状況が見られたため,これを解決するための改善を行った. 前者について,対話型進化計算の特定の世代において探索中の良解を交換するシステムを実現した.非同期処理のために,各ユーザの世代中の最良解をNAS(ネットワークHDD)に保存することとした.相手の良解をもらう際には,世代の最初にNASへアクセスすることとした.後者のポンプの問題は,水流ポンプを蠕動ポンプに置き換えることで解決した.蠕動ポンプは,チューブ等の流路壁に外から変位を加えることで内部の流体を輸送する.その特性に逆流防止もあるため,高い精度の混合が可能となった. 上記のシステムを構築し,遠隔地を想定した実験として同じ建物の別室で2名が同時に参加する実験を実施した.被験者として12名の方に参加してもらった.ある実験では,4種類のジュース(オレンジ,アップル,グレープ,ピンクグレープフルーツ)とミネラルウォーターを用いた.すなわち,GAの個体が持つ変数は5となる.この変数は整数であり,定義域は0から20とした.5つの蠕動ポンプの総駆動時間を4000msとし,変数の比をもとに各ポンプを駆動することで,表現型である混合飲料を生成することとした. 探索実験では,平均値,最大値の両方において上昇傾向が観察された.初期世代,最終世代の最良解を抽出して行った評価実験では,最終世代において統計的に有意に高い値が観察された(P<.05).比較実験を通じた良解を交換することの効果の検証や,実際の遠隔地間での検証が課題である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の2年目の目標である,複数ユーザが参加して飲料を探索するシステムを構築するとともに,その性能評価を調査するための実験を実施できたため.
|
今後の研究の推進方策 |
2名以上のユーザが遠隔地にいる状況で,このようなシステムが機能し,各ユーザが好む解を得られることを示す予定である.また,1名のみで実施した場合の実験結果との比較を通じ,解交換を行うことの効果の検証も目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により,出席を予定していた国際・国内学会のほぼ全てがオンライン開催になったため,旅費の支出が0になったことが主要因である.また,飲料生成とその味見をともなう研究課題であるため,実験はオンラインでは実施できない上,感染対策のために実験の進捗がかなり遅くなってしまったことも原因である. 研究そのものの進捗に大幅な遅れは無く,研究成果を挙げられてはいるものの,より迅速な実験の実施は課題である.2021年度は感染対策の効率化を図りつつ,実験の実施のスピードを上げることを予定している.
|