研究課題はユーザ間の解交換により美味しい混合飲料を探索するというものであり,これに関する研究活動を行った.個々のユーザは対話型進化計算による解探索を行い,ネットワークを介して良解を交換するという手法である.最終年度では,特に個々のユーザが参加する探索の性能向上に取り組んだ.これは,研究課題の根底となるユーザごとの探索がうまくいっていなければ解交換の意義が低くなるためである.実際に,過去の取り組みでは,個々のユーザの探索においてうまくいかない例も観察されている. まず,混合のもととなる飲料の数を増やした場合に,どのような探索が行われるか,評価値の上昇が観察されるか,の2点を調査する実験を行った.飲料の数は,5種と8種の場合という2条件を準備した.進化計算アルゴリズムには,遺伝的アルゴリズムを採用した.実験の結果,7世代分の評価を行ったものの,「美味しさ」の評価値の上昇は観察されなかった.探索するためのアルゴリズムの問題だけでなく,もととなる飲料の種類にうまく探索が進まないことの原因があると考えられる. そこで,飲料の種類に工夫を凝らした実験を行った.これまでの研究では美味しい混合飲料の生成を目指し,フルーツ系の飲料を採用することが多かったが,野菜系の飲料も取り入れることにより,どのような探索の傾向が観察されるかの調査を行った.具体的には,飲料の種類を6種とし,3種をフルーツ系,残り3種を野菜系とした.探索アルゴリズムには,同じく遺伝的アルゴリズムを採用した.実験の結果,評価値の上昇傾向が観察された.もととなる飲料の種類は,探索に影響を及ぼす可能性があるといえる. これらの成果をもとに,遠隔地から参加するユーザ間で解交換を行う探索技術の進展につなげる予定である.
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