研究課題/領域番号 |
19K12198
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
安東 弘泰 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20553770)
|
研究分担者 |
藤原 寛太郎 東京大学, ニューロインテリジェンス国際研究機構, 特任准教授 (00557704)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 数理モデル / 膵β細胞 / バースト発火 / 同期 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究では, 2型糖尿病患者の膵臓内の膵β細胞を外部刺激することにより、そのインスリン分泌機能を制御するための数理的アプローチを検討する。特に、機能不全となった細胞の数理モデル化や膵臓刺激設計法の開発を目的とする。本年度は、膵β細胞ネットワークの数理モデル解析を非線形ダイナミクスの観点から進めた。具体的には、膵β細胞の簡易モデルとしてHindmarsh-Roseモデルのネットワークを構築し、その同期ダイナミクスを数値的に解析することにより、雑音や周期外力に依存した非自明な同期と非同期間の遷移を発見した。これは、膵β細胞のもつ非線形ダイナミクスを、その機能改善のために効果的に活用するための刺激設計の方法論に繋げられる。また、膵β細胞と同様の電気的活動を示す神経細胞のネットワークにおいて、その興奮性抑制性神経細胞のバランスがシナプス伝達情報量に与える影響を明らかにした。 さらに、本研究テーマの理解を深めるために、ネットワーク上での離散的なメディアが示す非線形ダイナミクスにより、ある種の計算を実現可能な方法論を提案した。そして、人体における糖のように離散的エネルギー媒体がノードごとの需要に従ってネットワーク上を伝搬する簡易モデルを構築し、そのダイナミクスをシミュレーションにより検証した。 以上の成果は、2本の査読付き国際誌論文と2本の査読つき国際会議論文、さらには1つの国内研究会において発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵β細胞の数理モデル化と刺激設計の方策策定についての研究が順調に進んでおり、適宜学会発表などを行なっている。また、派生した研究として、ネットワーク上での非線形ダイナミクス一般に関する理論的研究も遂行した。加えて、最終年度の機械学習法を踏まえた刺激設計に関わる研究を開始しており、今後の研究の加速が期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として、これまでに構築した生理学的に妥当な膵β細胞の数理モデルと、ネットワーク上での非線形ダイナミクスの知見を活かして、インスリン分泌に関わる膵β細胞バースト発火ダイナミクス制御のための方法論を大規模なネットワークにおいて数値シミュレーションにより実証する。加えて、実データを利用した機械学習による生体の電気的活動の解析を行い、刺激設計の個別化に活用する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延のため当初想定していた出張計画がキャンセルとなったため次年度使用額が生じた。次年度の謝金として利用することを計画している。
|