研究実績の概要 |
本研究では, 2型糖尿病患者の膵臓内の膵β細胞を物理的に刺激することにより、そのインスリン分泌機能を調整するための数理的アプローチを検討する。特に、機能不全となった細胞の挙動を数理モデル化することにより膵臓刺激設計方針を構築することを目的とする。 最終年度では、膵β細胞の数理モデルにおける、オンデマンドフィードバック制御を実現するために、数値計算による検証を行った。特に、疾患により機能不全となった状態を再現するために決定論的カオスに従い不規則に発振するバースト細胞モデルとしてChayモデルを、確率的に発振するモデルとしてRizモデルをそれぞれ用いた。機能不全の生理学的な要因は分子生物学的な検討も必要であるが、ここでは簡単のためにパラメータ調整により、入力のない状態で不規則はバースト発火を生じるモデルを対象とした。制御手法としては、閾値を利用した自律的なカオス制御法を適用し、決定論的挙動も確率的挙動もともに律動化可能であることを数値的に示した。さらに、入力パラメータに対して、サーチを行うことにりょい、フィードバック制御する際の入力のエネルギー効率を検証し、最も低コストで不規則振動を規則化するための入力パラメータも見出した。本成果は、国際誌AIP Advancesに査読を経て発表された。このほか、非線形ダイナミクスに関連する予測モデルや細胞の刺激に対する応答解析手法に関して2本の国際誌論文を発表した。
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