研究課題/領域番号 |
19K12202
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
菅野 亜紀 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (20457039)
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研究分担者 |
高岡 裕 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (20332281)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分子シミュレーション / 薬効予測 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
薬物感受性(薬効)は、薬剤標的分子の遺伝子変異と関連することが知られている。本研究対象の、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする肺がん分子標的薬(EGFR-TKI)は、腫瘍のEGFR遺伝子変異の情報に基づき選択されるが、薬効不明な遺伝子変異も多い。そこで、EGFR-TKIとEGFRを対象に、各変異型との薬物相互作用についてチロシンキナーゼ活性阻害のメカニズムを分子シミュレーション解析により再現し、その結果を用い数理モデル化し薬効予測を可能にすることが最終目標である。 今年度は、第1世代から第3世代のEGFR-TKIの4治療薬の薬効の報告(Kohsaka et al., Sci Transl Med, 2017等)を参考に解析対象を選択した。その際、EGFR-TKIの世代での薬効の有無、EGFR-TKIの世代で薬効が異なる変異に分類した。そして論文報告数が多い遺伝子変異を選び、全世代で薬効ある7変異、全世代で薬効がない1変異、EGFR-TKIの世代間で薬効が異なる4変異、を解析対象とした。EGFRは二量体であり、1つの変異型の解析ではホモ変異型とヘテロ変異型2種類の計3構造での解析が必要である。なお、世代間で薬効が異なる4変異にはゲフィチニブは無効であり、世代の異なる薬剤で解析系の妥当性が検証可能である。 次に、既報でEGFRとATPの結合に関与しているアミノ酸、およびEGFRとATPアナログとの共結晶構造でATPアナログとの結合に関与していると考えられるアミノ酸を同定し、この両者をATPドッキングに関連する可能性のあるアミノ酸とした。そして、分子シミュレーション解析ソフトMOEのSite Finderで結合部位の候補を検出し、ATPドッキングに関連するアミノ酸を含む結合部位を選択することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子標的薬の薬効を指標に解析対象の変異型を選択するステップを追加したため、予定からやや遅れているようにもみえる。しかし、分子標的薬の世代間で薬効が異なる変異型を明らかにしたことで、今年度以降の実験に際して必要となる、解析系の検証が可能になった。そのため、「おおむね順調に進展している」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、決定した解析方法に基づいて正常型および変異型EGFRとATPとのドッキング解析とEGFR-TKIのうちゲフィチニブとのドッキング解析を行う。そして、既報の薬効を再現する特徴量を提示可能な集計条件を決定する。その後、薬効予測の数理モデルの導出を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分子シミュレーション結果を保存管理するストレージを購入する予定であったが、当初予定よりも出張回数が増えて消費税が増税されたことから、翌年度に購入することとしたため。
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