研究課題
薬物感受性(薬効)は、薬剤標的分子の遺伝子変異と関連することが知られている。本研究対象の、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする肺がん分子標的薬(EGFR-TKI)は、腫瘍のEGFR遺伝子変異の情報に基づき選択されるが、薬効不明な遺伝子変異も多い。本研究は、EGFR-TKIとEGFRを対象に、各変異型との薬物相互作用についてチロシンキナーゼ活性阻害のメカニズムを分子シミュレーション解析により再現し、その結果を用い数理モデル化し薬効予測を可能にすることが最終目標である。令和2年度は、分子シミュレーションによるドッキング解析をAutoDockやMOE Dockを用いて、EGFR とEGFR-TKI第1世代のゲフィチニブについて行った。解析に用いたEGFRの立体構造は、EGFR正常型ホモ2量体、および、EGFR変異型1つにつき3構造、すなわち、変異型ホモ2量体、正常型と変異型のヘテロ2量体(レシーバーが変異型)、正常型と変異型のヘテロ2量体(レシーバーが正常型) とした。EGFR変異型は、昨年度に解析対象として選定した12変異に4変異を加え、合計16変異を対象とした。次に、ドッキング範囲をEGFRの2量体のうちゲフィチニブが結合するレシーバー全体に設定して、100回のドッキングを実行した。現在、昨年度に同定したEGFR とATPの結合に関連する可能性のあるアミノ酸を含む部位にゲフィチニブが結合したか否か、結合した場合にゲフィチニブのどの部位が結合したか、等を指標に集計し、既報の薬物感受性を再現する特徴量を提示可能な集計条件やその組み合わせを検討中である。
3: やや遅れている
研究を進めていく過程で解析対象の変異型を追加したことに加えて、コロナ禍の状況により出張を制限されたことから、分子シミュレーションの実施予定に遅れが生じた。
ゲフィチニブの既報の薬物感受性を再現する特徴量を提示可能な集計条件を決定する。その後、薬効予測の数理モデルの導出に取り組む。
購入予定のストレージが欠品で再検討が必要になったことに加えて、出張回数が当初予定よりも少なかったため次年度使用が生じた。次年度に解析データ用のストレージを購入する予定である
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Biomedicines
巻: 9 ページ: 249(1-10)
10.3390/biomedicines9030249
Nature Commun.
巻: 11 ページ: 2777(1-8)
10.1038/s41467-020-16605-x