研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)は食生活の変化、肥満人口の増加を背景に増加し、世界的な公衆衛生上の問題となっている。しかし疾病対策の構築に必要なNAFLDの疫学的資料は未だ乏しい。 本研究は、医療ビッグデータ分析のための基盤と経験を有する専門研究者がチームを組み、大規模レセプト及び健診データを解析、NAFLDの実態および自然史解明を行う計画概要である。 3年計画の2年目である本年度は、1年目に作成した健康保険組合加入者の大規模データベース(データ元:日本医療データセンターJMDC)をもとに、医療機関で診断される脂肪肝の罹患率を飲酒量3群別に算出した。2012年度から2017年度の健康保険組合加入者6,492,526人(実人数)のうち、健診データから飲酒歴問診結果を1回以上有する加入者685,993人を抽出し、観察開始時点のレセプトデータに「脂肪肝」または「非アルコール性脂肪性肝炎」傷病名をもたない673,973人を解析対象とした。観察期間中に初めてレセプト傷病名に「脂肪肝」または「非アルコール性脂肪性肝炎」があったものを「新規脂肪肝」と定義し、脂肪肝罹患率を人年法により算出した。「脂肪肝」と診断されていない健康保険加入者の期間内の総観察人年は、1,828,520人年、期間内の「新規脂肪肝」例は全体で673,937人であり、飲酒量別脂肪肝罹患率は非飲酒者1,070/10万人年(95%信頼区間:1,054-1,086)、中量飲酒者1,193/10万人年(1,141-1,247)、多量飲酒者1,366/10万人年(1,246-1,495)であった。性別年代別に比較すると飲酒量3群別の脂肪肝罹患率には有意差を認めなかった。
|