研究課題/領域番号 |
19K12206
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
青木 空眞 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (40584462)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 甲状腺機能異常症 / 機械学習 / 人工知能 / 医療統計 / 基本的検査 / 時系列解析 / スクリーニング |
研究実績の概要 |
我々が構築した、人工知能による甲状腺機能異常症の見逃しを防ぐための基本的検査項目を組合せたスクリーニングモデルを実装したクラウドサービスに、検査値の時系列変化を併用する2時点予測モデルを追加・拡充した解析体制を整え、引き続き本手法の全国展開と、得られたデータによる精度改善を進めた。 特にこのクラウドを活用したスクリーニングは東北公済病院、東北医科薬科大学若林病院、城西病院の3施設における人間ドックにおいて導入され、これにより今年度までには累計で甲状腺刺激ホルモン(TSH)が測定感度(0.01μIU/ml)未満の治療が必要な甲状腺ホルモン過剰症(甲状腺中毒症)を49例、TSHが10.0μIU/ml以上の治療や観察が要される甲状腺ホルモン減少症19例を発見しており、この実施状況については日本人間ドック学会誌に論文を投稿し、報告した。こうした継続的な発見例の増加に伴い、研究計画書に記載した通り、時系列予測モデルをより高精度に構築するための学習データが整備されつつある。 今年度はさらにこのデータをベースとして、甲状腺中毒症の予測において新たな項目としてコリンエステラーゼ(ChE)を追加した時系列予測モデルを構築した上で精度の変化について定量的に比較・検討を行ったところ、この新しい時系列予測モデルは従来の1時点予測モデルと比較して偽陽性数を87%ポイント減少させ、ChEを用いない時系列予測モデルと比べても75%ポイント減少させた。一方疾患群の予測率はさらに上昇し、軽症な中毒症例であっても判別可能になるなど感度の向上も確認されたことから、ChEを追加すると大幅に高精度なモデルになることが確認されたため、第62回日本甲状腺学会学術集会において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載の通り、スクリーニングの継続的な実施によって見逃されていた甲状腺機能異常症の発見例も増加、時系列予測モデルの構築に必要な学習データサンプルサイズは拡充しつつあり、併せてこうしたスクリーニングの実施状況と精度改善予測モデルの構築について学会発表ならびに論文報告を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は甲状腺学会において報告した甲状腺中毒症の予測モデルに関する内容については論文化を視野に入れてより解析を進める。併せて研究計画書に記載の通り、甲状腺機能低下症の時系列予測モデルについても学習データが集まりつつあるため、予測モデル構築に向けた予備的な解析から開始していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行により、いくつかの学会がキャンセルとなったため出張旅費として使用予定であった分が大幅に少なくなり、また併せて研究協力者として共同で解析に当たる予定であった2020年度研究室配属学生も卒業研究が中断となったため、必要が見込まれた解析用端末PC、統計解析ソフトウェアのライセンスの用意数が少なくなった。加えて、論文の執筆が年度後半にずれ込んだために採択と掲載が年度末となり、これにかかる英文校正費、カラー図掲載料などの請求が次年度に回ったことなどの要因によって次年度使用額が生じた。 2020年度はウィルスの流行状況にもよるが、前年度参加できなかった分の学会発表および情報収集、研究協力者の解析環境整備にて使用する見込みである。
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