研究課題/領域番号 |
19K12211
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
塩生 真史 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (30345847)
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研究分担者 |
土方 敦司 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, プロジェクト特任講師 (80415273)
向 由起夫 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (60252615)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 機能予測 / 酵素 / 機械学習 / 出芽酵母 / ピリドキサールリン酸 / 低分子結合予測 |
研究実績の概要 |
1. ピリドキサールリン酸(PLP)結合タンパク質をモデルとしたProLMSの改良と他の補酵素への拡張 研究代表者がこれまでに開発してきたタンパク質と低分子の相互作用を予測する手法であるProLMSにおいて、用いていた機械学習の特徴量を見直し、さらにパラメータの最適化を行なった。これにより従来のProLMSよりも予測精度を向上させることができ、既存の高精度と評価されている結合残基予測法よりも良い精度でPLP結合残基を予測できることを確認した。またタンパク質どうしのドッキングに使われるグリッドスコアを応用した特徴量を開発し、3次元畳み込みニューラルネットワークによりPLP結合残基を予測できるようにした。さらに、新たにタンパク質と低分子のドッキングシミュレーションに基づく低分子の結合部位の予測法を開発し、クルクミン誘導体と活性酸素種代謝酵素の相互作用部位を予測した。この結果については論文で発表した(Molecules, 2019)。 2. 出芽酵母プロテオームに対するPLP結合予測と実験的検証 出芽酵母の構造未知タンパク質についてホモロジーモデリングを行い、得られたモデル構造と既知の実験構造にProLMSを適用してPLP結合能の予測を行った。その結果、複数の機能未知タンパク質においてPLP結合能が予測された。また、PLP結合能の実験的な検証を行うためにPLP結合アッセイ系の構築を行った。このためにPLPに結合することが既知であるAgx1や、ProLMSによりPLP結合能があると予測されたYhr202wなど6種類のタンパク質についてGST融合タンパク質の発現プラスミドを設計し、大腸菌での発現・精製を行なった。その結果、5種類については発現を確認でき、3種類についてはGSTタグを利用してアフィニティ精製することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. PLP結合タンパク質をモデルとしたProLMSの改良と他の補酵素への拡張 ProLMSの改良における研究実施計画として、PLP結合タンパク質の立体構造を3次元格子で表現し、その部分格子に基づいて3次元畳み込みニューラルネットワークで学習することを目標としていたが、それを達成することができた。さらに従来のProLMSについても特徴量の見直しと機械学習パラメータの最適化を行うことで、より精度良くPLP結合残基を予測できるようになった。また、これまでのProLMSとは違う観点から低分子相互作用部位を予測する手法を開発することができた。これらのことからProLMSの改良はおおむね計画に沿って順調に進展していると判断した。 2. 出芽酵母プロテオームに対するPLP結合予測と実験的検証 出芽酵母プロテオームのホモロジーモデリングを行い、得られたモデル構造に基づいてProLMSにより予備的な結果ながらPLP結合能を予測することができた。また、PLP結合アッセイ系の構築においては、複数の出芽酵母組換えタンパク質を大腸菌で発現・精製できており、さらに大腸菌でのレアコドンの使用頻度が多く、発現のボトルネックになっていた出芽酵母タンパク質遺伝子についても、大腸菌のRosetta株を使用することで発現効率を上昇させることができた。これらのことから実験的検証についても計画に沿って順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1. PLP結合タンパク質をモデルとしたProLMSの改良と他の補酵素への拡張 3次元畳み込みニューラルネットワークを用いたPLP結合残基予測をさらに進め、2019年度に改良したProLMSの予測精度と比較する。このことを進めるために、学部学生を雇用し、データ整理やプログラム作成の補助をしてもらう。また、ProLMSと2019年度に開発したドッキングシミュレーションに基づく低分子結合残基予測とを組み合わせることで、より陽性的中度の高い手法にできるかどうかを確認する。また、PLP以外の補酵素についても予測ができるように予測モデルの構築を開始する。 2. 出芽酵母プロテオームに対するPLP結合予測と実験的検証 2019年度はホモロジーモデリングにより出芽酵母プロテオームの構造予測を行ったが、全タンパク質配列の半分程度しか立体構造情報を得ることができなかった。開発している予測法は立体構造情報に基づくため、残りの半分程度に適用できないことになる。そこで、ホモロジーモデリングよりもより多くの立体構造を予測できることが期待できる立体構造予測法であるI-TASSERを適用し、これまでよりも多くの立体構造情報を取得する。また、PLP結合アッセイ系の構築では、GST融合タンパク質が発現したものの可溶化できない例が見られた。これらについては、可溶化のための発現条件の検討やGSTタグからヒスチジンアフィニティタグへの変更などを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の論文化のために英文校閲費を計上していたが、これを使うことがなかったため次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、データ整理、及び、プログラム作成のために学部生を雇用する際の謝金として使用する。
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備考 |
ProLMSで用いている特徴量の一つである低分子との結合傾向値をデータベース化して公開している。
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