研究課題
呼吸ニューロン間の因果解析に基づき、ニューロンの挙動を調べていく過程において、同時因果性についても検討する必要性が生じた。時系列解析において同時因果性は構造VARモデルにより推定することができるが、パラメータの識別問題のため推定値は一意に定まらず、変量(各ニューロンに対応する時系列)の順序に依存するということが知られている。この問題のため、一般的に構造VARモデルは事前情報に基づいて因果性の方向を仮定したデータにおいて、因果性の定量化を目的として用いられる。しかし、ニューロンの場合はこのようなアプローチが困難であるので、本研究では構造VARモデルを変換した誘導型VARモデルを用いたインパルス応答関数による分析を検討した。インパルス応答関数の計算にはいくつかの方法があり、本研究では変量の順序の事前仮定が不要な単純インパルス応答関数と一般化インパルス応答関数を適用し、シミュレーションデータを用いて解析アルゴリズムの検証を行った。即時因果性を付加しないモデルにより生成したシミュレーションデータにおいては単純インパルス応答関数、一般化インパルス応答関数も同じ結果となったが、即時因果性を付加した場合は一般化インパルス応答関数のみで即時因果性を検出することができた。しかし、付加した即時因果性と対称方向の成分も誤検出されることが判明した。これは誤差分散共分散行列の対称性に起因するもので、データのみから即時因果性の方向性を推定することは困難であることを示している。本年度の研究を通して、呼吸ニューロン間のネットワーク推定のため必要なデータ特性の抽出方法、インパルス応答関数の有意性の評価方法についてさらなる工夫が必要であることが分かった。
3: やや遅れている
昨年度に引き続き関係者との打ち合わせがオンラインのみに制約され、また、共同研究者の実験スケジュールにも遅延が生じており、解析結果と実験結果の検証を計画通りに遂行することが難しくなったため。
インパルス応答関数の計算においては個々のニューロンにインパクトを与える方法、ニューロン種や活性化順などによるグループ毎にインパクトを与える方法など様々な組み合わせが考えられる。インパルス応答関数の有意性の評価には主にモンテカルロ法、ブートストラップ法、漸近法があり、本研究で扱うニューロンのデータに適切なインパクトの与え方やインパルス応答関数の評価方法を検討する。そして、インパルス応答関数の計算結果を集約し、ニューロン間あるいはニューロングループ間の因果性の有無と方向性を推定する。
COVID-19の流行による学会、研究会、共同研究の打合せの中止、延期により旅費が執行できなくなり、また、研究の遅延により必要な機器の見直しが必要となったため。
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Journal of Medical and Biological Engineering
巻: 40 ページ: 899-907
10.1007/s40846-020-00563-2