研究課題/領域番号 |
19K12218
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
齋藤 卓 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (60588705)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオイメージング / 画像解析 / 統計解析 / メダカ / 遺伝統計学 |
研究実績の概要 |
本研究では,生きたまま個体全身に渡って器官特異的イメージングが可能なメダカを利用し,系統間の表現型比較解析を可能とする画像解析技術との融合を図ることによって,疾患に関わる遺伝背景の解明に向けた新規のアプローチを展開する.この目的のために,①器官特異的可視化と疾患モデル.②メダカ全身での器官形態の蛍光画像計測,③画像解析による器官形態の量的評価,④形態特徴量とゲノム情報の関連解析,の4つの項目についての研究を計画した.当該年度においては骨組織に注目し,①,②と③の計画について研究を実施した. ①器官特異的可視化と疾患モデル.メダカの骨特異的な蛍光画像計測のため,カルセインとアリザリンレッドによる標識法について検討し,蛍光試薬溶液の濃度等の最適条件を決定した.メダカの骨異常を有する変異体として脊椎骨の癒合がみられるFused系統を導入し,上記の2種の蛍光試薬によってその骨異常の解析が全身にわたって生きたまま可能であることを示した. ②メダカ全身での器官形態の蛍光画像計測.画像計測には広視野蛍光顕微鏡を用いて観察を行い,解像度・撮像時間などを考慮し,その最適条件を決定した. ③画像解析による器官形態の量的評価.(A)形態標準形の構築と(B)形態特徴量抽出の2つの項目について研究を進めた.(A)においては,メダカの形態特徴を考慮した画像レジストレーション法を構築し,個体間での撮像のばらつきを補正する方法を考案した.(B)においては,特徴量記述子による形態の数値化を行った.野生型,変異体での形態特徴量の分類が十分な精度で可能であることを検証することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においては骨組織に注目し,①器官特異的可視化と疾患モデル.②メダカ全身での器官形態の蛍光画像計測,③画像解析による器官形態の量的評価,の計画について研究を進めた.研究はおおむね順調に進展した.具体的な研究項目の進捗は以下である. ①器官特異的可視化と疾患モデル.メダカの骨特異的な蛍光画像計測のため,カルセインとアリザリンレッドによる標識法について検討した.蛍光試薬溶液の濃度を検討し,メダカ稚魚を生きたまま低濃度の溶液に浸漬させることで蛍光標識が可能であることを検証することができた.さらにメダカの骨異常を有する変異体として脊椎骨の癒合がみられるFused系統を導入し,上記の2種の蛍光試薬によってその骨異常の解析が全身にわたって可能であることを示した. ②メダカ全身での器官形態の蛍光画像計測.画像計測には広視野蛍光顕微鏡を用いて観察を行い,解像度・撮像時間などを考慮し,その最適条件を決定した. ③画像解析による器官形態の量的評価.(A)形態標準形の構築と(B)形態特徴量抽出による表現型の数値化の2つの項目について研究を進めた.(A)においては,メダカの形態特徴を考慮した画像レジストレーション法を構築し,個体間での撮像のばらつきを補正する方法を考案した.(B)においては,レジストレーションした画像から形態ランドマークを抽出し,特徴量記述子による形態の数値化を行った.野生型,変異体での形態特徴量の分類が十分な精度で可能であることを検証することができた.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,①器官特異的可視化と疾患モデル.②メダカ全身での器官形態の蛍光画像計測,③画像比較解析法の開発と器官形態の量的評価,④形態特徴量とゲノム情報の関連解析,の4つの項目についての研究を進めていく. ①器官特異的可視化と疾患モデル.蛍光色素による標識についてデータの取得を進める.さらに無染色イメージングとマーカー遺伝子を用いた蛍光タンパク質による標識について検討を行う.自家蛍光を用いた観察法,また,骨芽細胞マーカーであるOSX遺伝子等のプロモーターを用いた標識法について検討する.メダカの骨異常を有する変異体として側弯症型の異常がみられる系統の導入を進める.さらに,骨芽細胞分化阻害薬等の投与モデルを検討する. ②メダカ全身での器官形態の蛍光画像計測.画像計測に共焦点顕微鏡,ライトシート顕微鏡による撮像を加えて高解像度での計測を行う. ③画像解析による器官形態の量的評価.形態特徴量抽出による表現型差の数値化に関して,ベイズ統計法などの高度な統計解析法を駆使して形態ランドマークの自動抽出法を検討する.さらに,特徴量記述子による形態の数値化を行った.大きな計算コストのかかる画像解析のために専用計算機によるGPUを利用した並列計算による計算効率化を検討する. ④形態特徴量とゲノム情報の関連解析.複数の系統群に対して計測・定量した形態特徴量とゲノム多型情報との比較を行うことで遺伝・環境因子の表現型への量的作用について統計学的に検討する.既知の遺伝多型と機能異常について特徴量が形質として適切かどうかを検討し,適切でない場合には特徴量抽出法へのフィードバックを行い特徴量記述子選定の再検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に購入予定だったワークステーションについては,研究進捗状況を踏まえて次年度購入予定とした
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