研究実績の概要 |
当該年度では, 欠損や新たな構造の出現等により, 比較画像中に非対応の領域があるケースについても, 実用的なレジストレーションを行うことができるよう, 非対称な相互作用をもつマルコフ確率場モデルを用いる手法へと拡張を行った。非剛体レジストレーションでは, 一定の間隔で等方的に配置した制御点により, 画像の局所変形を表現する。提案手法では, 非剛体レジストレーションを行う前に制御点間の対応度合いを求める。その対応度に基づき, その制御点に対するマルコフ確率場の分散を与える。このとき, 対応度の大きな制御点には小さな分散を, 対応度の小さな制御点には大きな分散を設定する。それにより, 対応度の高い制御点は, 積極的に局所変形を行い位置合わせを行うようになる。逆に対応度の低い制御点は, 周囲の制御点の変形を模して滑らかな変形を表現するようになる。対応度と分散の関係は, シグモイド関数のような非線形関数により与えた。制御点間の対応度は, 非剛体レジストレーションの実行前だけでなく, その反復計算の途中においても繰り返し更新するようにした。それにより, レジストレーションが進むに従ってより信頼できる対応度を求めることができ, 結果的に位置合わせというタスクと, 対応/非対応領域のセグメンテーションというタスクを同時に解くことができると期待される。本アイディアの実用性を検証するため, Digital Retinal Images for Vessel Extraction (DRIVE)データベースの網膜画像に人工的な欠損を与えたものを用いて実験を行った。その結果, 非対称性な相互作用を与えることで, 欠損領域周辺での位置合わせ性能が向上することを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対応していない領域が存在する画像に対し実用的に機能するレジストレーション技術を確立することは, 当初の研究計画にも盛り込まれていたものである。しかしながら当初の計画では, アルゴリズムに改良を加えることで欠損領域の影響受けない解を探索する技術を確立する予定であった。しかしながら, 非対称な相互作用をもつマルコフ確率場モデルを局所変形を記述するモデルに用いるというアイディアにより, 当初の計画よりもより汎用的な枠組みで非対応領域へ対処する技術を構築できる見込みが立ったと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
制御点の対応度に基づく相互作用の非対称性については, 比較画像に応じてアダプティブに決定されることが望ましい。今後は網膜画像以外にも様々な医療画像に焦点を当て, 最適な制御方法を確立する。また, 制御点間の対応度をどのような画像特徴に基づき決定するかも重要な課題である。本年はSIFT特徴量など広く用いられる画像特徴を採用したが, この特徴についても画像に応じて適応的に決定する方法を確立することを目指す。さらに, 非剛体レジストレーションの反復計算の過程において繰り返し対応度を計算するため, 計算コストを削減することも重要な課題となる。
|