研究課題/領域番号 |
19K12221
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 善幸 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 教授 (70353430)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パッケージング・シグナル / 高分節型RNAウイルス / インフルエンザウイルス |
研究実績の概要 |
本研究は、分子進化学的・生命情報学的手法をもちいて、高分節型RNAウイルスであるオルソミクソウイルス科、レオウイルス科に属するウイルスの各ゲノム分節に存在すると考えられるパッケージング・シグナルを同定することを目的としている。2019年度には、オルソミクソウイルス科、レオウイルス科においてパッケージング・シグナルの検出に適したウイルス種対を選定することを目的とした。その条件は、遺伝子再集合体を産生せず、近縁で、すべてのゲノム分節の塩基配列情報が利用可能なことである。オルソミクソウイルス科で、上記の条件を満たすウイルス種対として、インフルエンザC型ウイルス(ICV)とインフルエンザD型ウイルス(IDV)が考えられた。ICVもIDVも、ゲノムは7本のマイナス一本鎖RNAからなる。ゲノム分節は長い方から1番~7番と番号がふられており、それぞれ、塩基性ポリメラーゼ2、塩基性ポリメラーゼ1、ポリメラーゼ3、ヘマグルチニンエステラーゼ、核タンパク質、マトリクスタンパク質、非構造タンパク質をコードしている。国際塩基配列データベースに登録されている塩基配列データを調査することにより、7本のゲノム分節のすべてについて全長にわたって塩基配列が決定されているウイルス株は、ICVでは4株、IDVでは21株あることが分かった。これらの塩基配列を抽出し、7本のゲノム分節のそれぞれについて、合計25本の塩基配列をMAFFTにより多重整列し、MEGAをもちいて系統樹を作成した。ゲノム分節間で作成された系統樹の樹形を比較したところ、すべてのゲノム分節において、ICVとIDVはきれいに独立したクラスターを形成することが分かった。また、ICVのクラスター内、IDVのクラスター内では、ゲノム分節間で樹形が異なっている場合があることから、遺伝子再集合の痕跡が種内では検出されるが種間では検出されないことが検証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究実施計画では、オルソミクソウイルス科、レオウイルス科においてパッケージング・シグナルの検出に適したウイルス種対を選定し、選定されたウイルス種対について全ゲノム分節の塩基配列を国際塩基配列データベースより抽出し、各ゲノム分節で多重整列、系統樹を作成して、系統樹の樹形から、遺伝子再集合の痕跡が種内では検出されるが種間では検出されないことを検証することまでを遂行する予定であったが、実際にオルソミクソウイルス科に属するインフルエンザC型ウイルスとインフルエンザD型ウイルスのウイルス種対について、予定通り研究が遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2020年度の研究実施計画にあるように、インフルエンザC型ウイルスとインフルエンザD型ウイルスのウイルス種対について、パッケージング・シグナルを同定するための、ゲノム塩基配列の統計的解析を進める予定である。また、2020年度の研究実施計画で当初考案していたパッケージング・シグナル検出のための統計学的方法がうまく働かなかった場合に備えて、新たな統計学的方法を考案する予定である。さらに、2019年度には到達できなかった、レオウイルス科におけるパッケージング・シグナルの検出に適したウイルス種対の選定も進める予定である。
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