研究課題/領域番号 |
19K12225
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
石原 彰人 中京大学, 工学部, 教授 (80387620)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 網膜 / 視細胞 / 双極細胞 / 数理モデル / 光応答解析 |
研究実績の概要 |
網膜における錐体と水平細胞および双極細胞によって構成されたシナプスは、視覚系における最初のシナプスである。そこでは、双極細胞以降の光応答解析結果から、基本的な視覚情報に関係した情報経路の分離が実現されている。また、この経路分離には水平細胞など他の細胞からの入力が修飾的に働くことで形成される機構が考えられる。本研究では、そうした錐体シナプスにおける情報処理メカニズムについて数理モデルを用いた計算論的アプローチで明らかにしていくことを目的とする。 2019年度は、過去の研究成果であるOFF型双極細胞の数理モデルを発展させ、視細胞‐双極細胞ネットワークにおける情報処理機構の解析を実施した。これは、それぞれ生理的な知見を動員した視細胞錐体およびOFF型双極細胞からなり、光に対する錐体シナプス部位のグルタミン酸放出量や、双極細胞の光応答を再現する。特にOFF型双極双極細胞応答形成に重要なAMPA型グルタミン酸レセプタによる電流や、双極細胞に内在するイオン電流機構を含む形のモデルである。 シミュレーション解析の結果、定常的な光の明るさに応じて、錐体‐双極細胞ネットワークの周波数特性が変化することが明らかになった。また、双極細胞に内在するイオン機構の光応答への寄与も定常光の明るさレベルに依存することを示唆した。今後、視覚に関する基本的な情報とこうしたネットワーク特性の関連について解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画時では2019年度は、概要で述べた内容以外に既存の数理モデルなどを利用しながら錐体のシナプス部位におけるマイクロ回路について数理モデルを構築する予定であった。こちらについて2019年度に進めてきたが、新型コロナなどの影響もあり発表機会を見合わせている関係などから、現在までのところ外部に発表できていないため、やや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
錐体シナプスのマイクロ回路モデルに関して、さらなる研究の実施を進めるとともに、新型コロナ関係の情勢が落ち着いてきた段階で、学会発表などを通じて成果を高めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた研究成果発表のための予算に関していくつか取りやめたため次年度に繰り越した。翌年度分と合わせ成果発表のために使用していく予定である。
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