研究課題/領域番号 |
19K12226
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
遠里 由佳子 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (80346171)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 物体検出 / 因果推論 / 時系列データ / C. elegans / データ駆動型解析 / バイオインフォマティクス |
研究実績の概要 |
線虫の野生胚やRNAi胚の2次元タイムラプス顕微鏡画像データに対し、非線形時系列間の因果推論法であるConvergent Cross Mapping(CCM)を用いて、因果構造マイニングを行う手法の確立を目指している。研究計画2年目の2020年度は、TubulinをGFPで標識し撮影したタイムラプス顕微鏡画像から得た細胞核の時空間データを解析の対象として、[1]特徴抽出法と [2]因果推論法を検討した。課題[1]では、特徴量として細胞核の面積や円形度などの指標の多重共線性を評価し、さらに、楕円フーリエ記述子を用いた輪郭形状の分析を実現した。楕円フーリエでは、輪郭を楕円フーリエ係数で近似し、係数を対象のサイズや回転などに不変となるよう標準化することで、情報の抽出と復元が可能であることを確認した。その研究成果の一部をバイオ情報学研究会で発表した。なお、得たデータを主成分分析により情報圧縮を試みたところ、情報の欠落が大きいことがわかった。これは因果推論における問題になると予想され、今後その原因を調べる。課題[2]では、本年度に Leng らが因果推論の対象を2変量から3変量に対象を拡張し、状態空間での偏相関を計算する Partial Cross Mapping (PCM) を提案したことを受け、PCMの再現と改良を試みた。3変量のCoupled Logistic 式で3パターンの因果関係を想定したシミュレーションにより時系列を生成し、PCMと提案法の因果推論を比較した。直接的・間接的な因果関係にある変量間の推定精度を確かめた。また、短い時系列に対するCCMの拡張の1つであるCross Map Smoothness(CMS)の適用を検討し、状態空間上でのガウス過程回帰による予測を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に示したとおり、当初の研究目的・研究実施計画に従い研究が進んでいることから「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究実施計画に従い研究を進める。2021年度の研究計画の課題は、(1)因果推論法の精度向上と、(2)これまで対象としてきたデータ以外のデータへ対象の拡大し、手法の汎用性の向上を試みることがある。(1)では、直接的な因果関係の推定が、間接的な因果関係の推定と比べて弱く、その点の改善を試みる。そして、ガウス課程回帰のよる予測精度の向上を行う。(2)では、精度を上下する上で、正解がわかるデータであることが重要であるため、Coupled logistic 式以外のシミュレーションを検討する。そして、ノイズ量や時系列長の変化に対する評価を進める。
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