線虫の野生胚やRNAi胚のタイムラプス顕微鏡画像データに対し、非線形時系列間の因果推論法であるConvergent Cross Mapping(CCM)を用いて、因果構造マイニングを行う手法の確立を目指している。研究計画3年目の2021年度は、研究計画の[課題2-3]として、TubulinをGFPで標識し撮影したcontrol 胚と特定の遺伝子のRNAi胚のタイムラプス顕微鏡画像データから得られる時系列データのアトラクタ上の統合により、遺伝子変異の影響の検出法を検討した。 [課題1-2]として、上記の画像以外からの因果推論の実現を目的に因果推論法を検討した。その過程で、線形な時系列の因果推論に適したGranger因果性テストを、非線形な時系列に適用できるように拡張した、Non-Parametric Multiplicative Regression Grange因果性テスト (NPMR)を、ノイズに強いという理由で着目した。そして、NPMRを予測誤差の状態空間を用いるよう拡張することで、新しい因果推論手法を提案した。因果関係の正解がパラメータとして設定できるCoupled logistic式で生成した時系列を用いて提案手法を検証した。対象画像から得られる時系列が短時系列であるため、時系列長を25に設定し、因果関係の強弱を調整する「影響率」と呼ぶパラメータを網羅的に変化させ、Granger因果性テスト、NPMR、CCM などの従来手法と提案手法を比較した結果、提案手法の推論精度が最も高いことを確認した(66.6%)。2021年度は2020年度の研究成果の内容をIIBMPなどで発表したが、上記の内容は未発表であり、研究計画の終了後とはなるが、研究会と論文で発表することを目指し、より詳細な検証を進めている。
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