研究課題/領域番号 |
19K12229
|
研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
李 秀栄 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクト研究員 (50390670)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ウィルス / 糖鎖クラスタ / 立体構造予測 / 分子動力学計算 / レプリカ交換法 |
研究実績の概要 |
1. 成果の具体的な内容 本課題は、抗原―抗体相互作用のインシリコ予測を目的に、ホモ3量体構造を持つラッサウィルスの表面糖タンパク質を取り上げ、表面糖鎖クラスタの立体構造ダイナミクス、およびその抗原―抗体相互作用への影響を分子動力学計算により明らかにすることを目指す。令和3年度は、前年度の単量体モデルに関する予備計算の結果に基づき、3量体モデルを構築し分子動力学計算により表面糖鎖の立体構造分布を予測した。モデルとしては、実験的に同定された糖鎖分布を再現したものと、単一糖鎖で覆われたものの2種類を検討した。その結果、表面糖鎖は、タンパク質の運動には大きな影響を与えないものの、タンパク質表面を不均一かつ著しく遮蔽することが示唆された。また、2種類のモデルを用いた計算はどちらも同様な遮蔽効果を示すことから、糖鎖種類が遮蔽効果に与える影響は小さいものと示唆された。
2. 意義、重要性 ウィルスの表面タンパク質の多くは糖鎖で覆われている。表面糖鎖はクラスタを形成し高度な分子認識に関わっていると考えられており、ウィルス表面糖鎖はワクチンの開発の標的としても注目されている。しかし、糖鎖は構造的に複雑で運動性も高いため、ウィルス表面を覆う糖鎖の立体構造情報を実験的に得るのは極めて難しい。分子動力学計算は糖鎖立体構造情報を得る有力な手段であるが、複数糖鎖が結合したタンパク質の計算例は少なく、本成果は糖鎖集合系の構造予測と理解を進める上で学術的にも技術的にも重要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の単量体モデルを対象とした予備計算を通じてモデリングにおける諸問題を既に解決していたため、3量体モデルの構築は順調に進んだ。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に基本的な変更はない。高マンノース糖鎖、及び部分的に混合型糖鎖を混ぜた3量体フルモデルの計算と解析を進め、糖鎖クラスタの立体構造アンサンブルの特定と抗体との相互作用への影響を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、予定していた国内、国際会議の出張がなくなったため、テレワークとWeb会議に必要な機材を購入した他、課題研究を速やかに遂行るために新たなワークステーションを購入したが、それでも次年度使用額が生じた。次年度の学会もWeb開催が予想されることから、計算データの解析能力を補強し最終年度の研究結果を迅速にまとめるために、追加の解析機器購入にあてる予定である。
|