研究課題/領域番号 |
19K12253
|
研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
松原 行宏 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (30219472)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 学習支援システム / 人工知能 / 力覚・擬似力覚 / 力覚提示デバイス / タブレット端末 |
研究実績の概要 |
本課題では,学習支援システムにおいて「力覚提示デバイス」を用いて実際の「力覚提示」を行う場合と,インタフェースの工夫による実際の「力覚提示」をともなわない「擬似力覚提示」とで,1)学習そのものの行為や学習効果に差異が生じるのか生じないのか,また2)生じるとすればどのような差異が現れるのか,3)その理由は何か,4)学習課題によって「力覚提示デバイス」が適している場合や「擬似力覚提示」が適している場合があるのかどうかをシステム開発と評価実験を通して研究することを目的としている.具体的には漢字の筆順や美しい文字の書き方を学ぶ学習教材を対象としてシステム開発を行い,分析を通して新しい学習支援システムのモデルを提示することとした. そこで,(1)発見的学習を支援するための学習支援システムとして「力覚」を体験することが可能なシステムを設計開発する,対象教材を検討する,(2)同一対象教材に対して(A)「力覚提示」機能,および(B)「擬似力覚提示」機能を実現する,(3)指導のための「力覚提示」および「擬似力覚提示」を用いたフィードバック手法の検討,(4)(A)システム,(B)システムを用いた比較実験,学習実験,(5)考察をもとに新たな対象教材を検討し,比較実験を行う,の5項目について検討を行うが,そのうち2019年度では,(1)と(2)の項目について検討を行い,システムの開発が完了し,漢字の筆順(筆順誤りに関する間接指導/直接指導のためのフィードバック情報を想定)を学習題材として「力覚提示」機能,「擬似力覚提示」機能の実現を完了した.機能検証テストを行い,想定通り動作することが確認できた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 発見的学習を支援するための学習支援システムとして「力覚」を体験することが可能なシステムを設計開発,および対象教材の検討を行い,プロトタイプシステムが完成した.これまでの研究でタブレット型端末への力覚提示デバイスの導入,VR実験室のプロトタイプシステムを実現している.そこでこの枠組を用いて,本研究課題が狙いとしている「力覚提示」機能,「擬似力覚提示」機能を同時に実現するためのフレームワークを検討し,作成が完了した. (2) 「力覚提示」機能,「擬似力覚提示」機能の特性と有効性を検討する上で,まず力覚による間接指導のためのフィードバック情報としての活用を念頭において学習題材の検討を行った.その後,力覚による直接指導のためのフィードバック情報の活用への展開を試みることを予定している.そこで具体的に,i) 漢字の筆順(筆順誤りに関する間接指導/直接指導のためのフィードバック情報を想定),ii) 漢字の書き方(毛筆で美文字を書く,運筆方向や手の力の入れ方などの直接指導のためのフィードバック情報を想定)が適切との結論に至り,これを学習題材として選択した. (3) 2019年度では,第一段階として,i) 漢字の筆順(筆順誤りに関する間接指導/直接指導のためのフィードバック情報を想定)を学習題材としてシステム設計を行い開発が完了した. 本システムは学習者に正しい筆順を認識させるための学習支援システムとして作成し機能検証を行った.システムは学習者の誤った筆順の知識の修正を力覚提示,擬似力覚提示,音声提示等により行えるようになった.各提示方法の差を検証するため,システムは事前に選択された単一の提示方法のみで誤り指摘を行うことが可能となった. 上記(1)(2)(3)について,当初の計画を概ね達成している.
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は,(1),(2)の項目をおおむね予定通り達成できたので,次年度以降は以下の内容を実施する予定である. (1) 2020年度 (3)指導のための「力覚提示」および「擬似力覚提示」を用いたフィードバック手法の検討: 本システムでは漢字の筆順の誤りを,誤り1)「画の順番を間違う」,誤り2)「画の途中で離す」,誤り3)「次の画を続けて書く」,誤り4)「画を逆の方向から書く」の4つに分類し,学習者が誤りを判別できるようフィードバックを行うことを考える.4種の誤りに対して「力覚提示」,「擬似力覚提示」での具体的なフィードバック方法を検討する.音声提示による誤りは,ブザー音の鳴り出したタイミングで誤り情報のフィードバックを行う予定である. (2) 2021年度 (4)(A)システム,(B)システムを用いた比較実験,学習実験,考察をもとに新たな対象教材( ii) 漢字の書き方)を検討,実験実施: 2021年度は,力覚及び擬似力覚提示機能を持つ漢字学習支援システムを用いて,誤り指摘方法の違いによる学習効果の差,それぞれの特性についての比較実験および調査を行う.また実験の考察をもとに,漢字の書き方(毛筆で美文字を書く,運筆方向や手の力の入れ方などの直接指導のためのフィードバック情報を想定)の学習題材の選択を検討し,プロトタイプシステムの検討を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は,システム開発のコーディング,テスト,評価実験等で,アルバイトを雇用する予定であったが,主にシステム開発のみ行い,本格的な評価実験を実施しなかったのでアルバイトの謝金が不要であった(0円).2020年度は開発したシステムでの規模の大きい評価実験を実施する予定である.そこで繰り越した費用をアルバイト雇用に充てる計画であり,2人×20日程度を予定している.
|