本課題では,学習支援システムにおいて「力覚提示デバイス」を用いて実際の「力覚提示」を行う場合と,インタフェースの工夫による実際の「力覚提示」をともなわない「擬似力覚提示」とで,1)学習そのものの行為や学習効果に差異が生じるのか生じないのか,また2)生じるとすればどのような差異が現れるのか,3)学習課題によって「力覚提示デバイス」が適している場合や「擬似力覚提示」が適している場合があるのかどうかをシステム開発と評価実験を通して研究することを目的としている.具体的には漢字の筆順や美しい文字の書き方を学ぶ学習教材を対象としてシステム開発を行い,分析を通して新しい学習支援システムのモデルを提示することとした. そこで,(1)発見的学習を支援するためのシステムとして「力覚」を体験することが可能なシステムを設計開発する,(2)同一対象教材に対して(A)「力覚提示」機能,および(B)「擬似力覚提示」機能を実現する,(3)指導のための「力覚提示」および「擬似力覚提示」を用いたフィードバック手法の検討,(4)(A) (B)システムを用いた比較学習実験,(5)考察をもとに新たな対象教材の検討と比較実験の実施,の5項目について検討を行うこととしたが,2019年度で(1)(2)の項目を実現した.また2020年度では(3)の検討を行い,漢字の筆順指導(筆順誤りに関する間接指導/直接指導)のための「力覚提示」および「擬似力覚提示」を用いたフィードバック手法の開発が完了した.2021年度は項目(4)(5)について検討し,(A),(B)両システムを用いた比較実験を行った.その結果,漢字の筆順指導の指導に関して「力覚提示」および「擬似力覚提示」いずれの方法でも一定の指導の効果があることがわかった.また指先の力の加減など細い制御が必要な運筆を対象とする場合には,両者での差異が生じる可能性が示唆された.
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