研究課題/領域番号 |
19K12263
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研究機関 | 有明工業高等専門学校 |
研究代表者 |
塚本 公秀 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 嘱託教授 (30155337)
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研究分担者 |
大渕 慶史 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (10176993)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | VR/AR / アクティブ・ラーニング / 予備教材 / 学生視点 / 学習前体験 |
研究実績の概要 |
本研究では学生視点から開発したアクティブ・ラーニング教材のネットワーク上での構築を試みている。近年産業界で活用されているVR/AR技術を教育現場に適用して学生の興味を強く惹く予備教材の開発を試みる。また、学生自身が副教材開発の一端を担うことで、教員の意図する実習ストーリーを、学習者が理解しやすい教材とできる。これまでの学生と共同開発した教材は実体モデルとして実際の授業に用いてきた。これらの教材に加えて、予算や製作技術、設置場所などの制約により実物が製作できなかったモデルは、VR技術を用いて仮想世界での教材として構築を試みた。実物でなく仮想空間だからこそ表現できる教材を開発した。学生と共同開発で、補助教材や事前学習だけでなく、遠隔授業や反転授業のための学習ストーリーを創造することを行った。 VRコンテンツの製作段階で、実際に学習者による試用を行って得られた感想に、仮想空間内の移動が自由で個人のペースで視聴できるが、仮想空間や教材としてのコンテンツがリアルでないという改善点が得られた。製作しているコンテンツは全て3D-CADによりプロダクトモデルとして製作したものをVRコンテンツに変換したもののため、テクスチャーの再現ができないことによる。そこでリアルに見せるために、360°カメラを用いて実験装置や実習作業の実写をし、HMD(Head Mount Display)で視聴できるコンテンツの制作を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
専門教育に活用できる科目のストーリーを想定し、高専や大学の学生と共同でアクティブ・ラーニング教材をVRコンテンツで開発してきた。HMDや360°カメラなど同一の開発環境を研究代表者と共同研究者とで構築し、互いで製作したVRコンテンツの確認を容易にできるよう環境整備を行ってきた。現時点でのVRコンテンツの視聴には、特定のHMD販売メーカによる既設のプラットフォーム(特定の企業のサーバー)で視聴するのが多くのユーザー(学習者)にとって便利な方法である。セキュリティや著作権上を考慮すると、ネット上で視聴するためにはネットワークの負荷を考慮したプラットフォームの整備が必要となる。 これと平行して本年度は、よりリアルなコンテンツの製作を目的として360°カメラを用いて実写をおこなう方法を試行した。たまたま、本年度は新型コロナ感染症(COVIT-19)のパンデミックにより、多くの高等教育機関では感染防止のために遠隔授業がなされた。特に実習や実験では教職員の作業をビデオカメラで録画し、学生が視聴する方法などがなされている。しかしこれらのコンテンツに対する学生の評価はあまり良くないようである。これは学生にとってはテレビを見る感覚でしかないことが一因と考える。学習者がコンテンツをHMDで立体的に視聴できれば、実作業に臨場しているような没入感が得られ、学習内容の理解に効果の高い教材となるのではないかと考えられる。そこで本格的なHMDは高価であるため、スマートホンを利用したHMDが低価格で市販されているものを利用して視聴するコンテンツ製作を指向した。
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今後の研究の推進方策 |
VR技術を活用して学生の視点から開発されたアクティブ・ラーニング教材のコンテンツをより効果的なものにするためと、現在のパンデミック状況下での遠隔教材として有効利用する観点から、製作方法を多様化して開発速度とコンテンツの種類を増やすことを試みる. 仮想空間の構築と、過去に作成していた一部の教材の3D モデルの仮想空間への移植については、共同研究者の開発したVR上の仮想実験室に研究代表者の開発した仮想教材のいくつかを移植し、実習ストーリーに沿った動きを与えるプログラム開発を続けている。今後は大学および高等専門学校で行っている実習授業においてVRの活用が効果的となる実習ストーリーを考案する予定である。その際には仮想空間であるからこそ表現できる構造や動作を教材に与えることを進めてゆく。申請時の予定ではVR/AR技術を用いた教材の開発・応用を行っている先進の海外の教育関係者と議論を行い情報を得るとともに、日本の学生に適するアクティブ・ラーニング教材としてのストーリーを設計しようとした。しかし、感染症パンデミックのため,開発したコンテンツの海外の関係者とのやりとりは,企業のプラットフォーム上でしか共通視聴ができず,この部分の進捗に支障が出ている。そこで方針を変更し,共同研究者との共通視聴が可能な簡易システムを,サーバ導入により自前で準備し,開発した教材の評価が可能なミニマム環境を準備することで研究の推進を行う予定である. さらに近年のVR装置の普及を利用して、学生自らが容易にコンテンツを製作できる手法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は学生視点の開発が主となっている。研究代表者の転勤で共同研究者の勤務地と近くなり両機関の学生の相互訪問で情報交換ができる環境になったにもかかわらず、コロナ感染症拡散防止のための移動制限が何度も発生した。また、研究代表者の高専も転勤当初から遠隔授業となり学生による本テーマの研究が十分におこなえなくなった。これに加えてXR総合展などにも出張制限から参加できず、XR先進国の北欧のフェスにも参加できなかったため、先端技術を知るための機会を逃している。学会発表もリモートのため、多くの開発に対する批評や助言を得ることができない状態の一年度であった。 これらのことにより、研究の進捗自体が遅れていることから研究費に残が生じた。次年度は社会情勢を見ながら,研究方法もネットワークを多用した、研究方法に変更するなどの工夫をして進める予定である。
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