研究課題/領域番号 |
19K12272
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
大西 淑雅 九州工業大学, 学習教育センター, 准教授 (50213806)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学習分析 / 学習データ / LMS / FPGA / アドバイス |
研究実績の概要 |
学習データに関する標準化や項目が提唱され、様々な学習データを積極的に分析・活用する試みが行われている。しかし、学習/教育活動において、適切なアドバイスを与えるために必要な分析を行うには、対象となる項目やデータが多くなり、結果、解析に専門的な知識やデータ処理環境が必要となる。本研究では、各所属機関における学習分析データの活用を重視し、学習データの自動収集や分析モデルの構築などの試みを行う。 本年度は、学習データの収集が容易で、複数年の比較が行いやすい、学部1年生の必修講義「情報リテラシ」を研究対象とした。Moodle上の学習データのみを収集し、手作業による分析モデルの構築を試みた。4つのグループに分類することで、学習データが示す傾向と成績との関係について分析を進めた。研究結果は国際会議に公表した。その結果、精度には課題が残るが、Moodle上の学習データやコンテンツデータを用いることで、現場レベルで学習分析を行い、活用できる可能性を確認できた。 また、FPGA開発ボードを用いて、ネットワークパケットのキャプチャを行う、学習関連データのハードウェア収集処理の基本設計を進めた。なお、プロトタイプ開発を効率良く行うために、インターネットに公開されているリファレンスデザインをベースに、オリジナル機能の開発を進めた。さらに、Linuxからの制御やデータの相互交換を実現するための、アクセス手段と実現方法について検討を行った。これにより、Moodleサーバから、FPGA開発ボードへの学習データの送付、短期学習データを用いた学習データの処理に関する一連の流れを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の影響により、遠隔授業の支援業務が急増し、計画通り研究を進めることができなかった。計画2年目の前半においても、十分な時間を確保できない可能性もあるが、できるだけ研究を効率的に進め、計画通りの実施を目指す。 市販のFPGAボードを用いた開発・実験を行うための環境は、計画通り整えることができた。一方、物理層に流れるネットワークパケットを用いた、学習分析・学習予測を行うLAエンジンのプロトタイプ開発は遅れている。しかし、通信デバイス上での学習データの収集・分析を支援する、ハードウェア処理部の基本設計は進めることはできた。 なお、複数のMoodleサーバ上に存在する学習データの収集については、2種類の国際規格に準拠した学習履歴の収集サーバを構築し、基本的なデータ収集を開始し、動作検証を行っている。 以上のことから若干の研究の遅れが発生していると自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目では、初年度のデータの収集・分析を支援するハードウェア処理部の開発を進めると共に、学習データの実時間解析を可能とする「LAエンジン」の設計・開発を引き続き行う。具体的には、ハードウェア実装が容易な収集・分析のアルゴリズムを複数提案し、FPGAデバイス上への実装を進め、評価検証を行う。なお、本研究では、FPGAカード搭載のMoodleサーバからの学習データの収集、FPGAによる学習データの処理・分析などの機能開発を重点的に進める。 次に、教授者や学習者それぞれに、適切なフィードバックを与える「アドバイスデータベース」の設計・構築を行う。例えば、コース構成(教材・小テスト・課題などの配置)と学習時間、理解度、シラバスなどの関係性をデータベース化したものを構築する。さらに、コース構成の変更(増加・減少)や事前学習量の変更、教授構成の変更などにも、対応可能なデータベースを作成する。 また、国内外の関連研究を十分調査した上で、過去の研究結果を発展させ、分析結果をMoodle上で活用できる仕組みの実現を目指す。具体的には、Moodleサーバ側に外部連係インターフェース(Web API) 機能を新たに開発し、「LAエンジン」が生成する分析結果(アドバイスを含む)を、Moodleサーバ内の独自データベースに保存する仕組みを実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
FPGAを用いたプロトタイプ設計を進めるにあたって、必要な開発ライセンスを購入する予定であった。しかし、所属機関が保有するライセンスを有効活用できることがわかった。一方、国際会議・国内会議への参加・発表のため、旅費は当初予定より多くなる見込みであったが、年度後半は、旅費を必要としないオンライン開催が増えた。 以上の理由から未使用額が発生した。次年度の使用計画として、研究発表の計画を増やしつつ研究を進める。また、デバイスドライバの開発経費、FPGAカードの実装に必要なライセンスの購入経費などに使用する予定である。
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