研究課題/領域番号 |
19K12275
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
林 佑樹 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (40633524)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多人数マルチモーダルインタラクション / CSCL / 創造的議論 / 対話状況の推定 / 議論リフレクション / ドキュメントセマンティクス |
研究実績の概要 |
本研究では,これまで開発を進めてきたマルチモーダルインタラクション情報を利活用できる協調学習支援システム開発プラットフォーム(CSCLプラットフォーム)を基礎として,一意な解を定めることの難しい創造的議論を題材とした参加者相互の情動的交流を促す知的エージェントを開発することを目的としている.初年度は,主として以下の2つの成果を挙げている. (1)議論時の対話状況を捉える仕組みの検討:知的エージェントの対話への即時的介入の可能性を探るために,創造的議論の場として学術研究ミーティングに着目し,タイムリーに交わされる議論参加者の視線情報や発話情報から参加者の共同思考(メタ認知モニタリング活動)を捉えるための学習支援ツール(知的エージェントのプロトタイプ)を開発した.発表者やファシリテータといった議論参加者の役割情報,議論資料共有ツールおよび,議論内容が表出された議論構造可視化ツールに対する多人数インタラクション情報を区別して扱うことにより,この仕組みを実現している. (2)議論振り返りのためのインタラクション区間抽出ルールの検討:創造的議論を実りあるものとするためには,自身の説明不足故に参加者が十分に理解できなかったと思われる箇所などを内省し,次なる議論に備える活動が肝要である.そこで対話支援エージェントによる議論への即時介入とは別のアプローチとして,コンテンツへの意味内容が付与された議論資料(ドキュメントセマンティクス)や参加者に向けられた視線情報に基づき,学習者の振り返り活動のためのインタラクション区間に解釈を与える抽出ルールを考案した.初期的な評価実験により,振り返り活動に資する区間を抽出ルールにより検出できる可能性があることを確認している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画として,CSCLプラットフォームを拡張整備し,リアルタイムにやり取りされる言語・非言語情報から参加者の議論状況を捉える仕組みの実行可能性を確認している状況である.また,創造的議論の営みを,議論準備・議論・議論後の振り返りという一連のサイクルから成るものと俯瞰して捉え,議論後のリフレクション支援に向けた検討も進んでいる.議論時の出力インタフェースとしてのエージェント実装は途中段階であるものの,これらの基礎検討は完了していることから,おおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度の推進方策として,現状ではアドホックに定めている議論状況および振り返り状況の検出法を創造的議論のための情動認識モデルに洗練していく予定である.当初は大規模なデータ収集実験に基づくデータドリブン的アプローチによるモデル構築を考えていたが,新型コロナウイルスの影響により実験協力者を募る形式でのデータ収集は難しいことが想定されるため,セオリードリブンなモデル構築に方策を切り替える予定である.同時に,個々の参加者の情動状況を統合解釈したエージェントの適応的振る舞いを介入戦略モデルとして構築していくことを計画している.
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