最終年度は,創造的議論における参加者の多様なインタラクション状況を捉え,コミットメント向上を促す適応的助言を提示可能な議論支援フレームワークを開発した.主として以下の課題を達成した. (1) マルチモーダル情報処理機構の検討:オンライン議論環境で観測される複数人のマルチモーダル情報から,抽象度や時間スケールの異なる多様なインタラクション状況解釈の積み上げ/助言提示を実現するマルチモーダル情報処理機構を設計した.同機構は,(i)インタラクション要素を検出する機能,(ii)議論状況を構造的に解釈する機能,(iii)検出したインタラクション状況に即した助言を提示する機能を備えている.インタラクションの粒度に応じて複数層に区分された共有メモリと,各層に対応するインタラクションデータを共有メモリに書き込む検出エージェントおよび,助言提示エージェントを配備することにより,多様なインタラクション状況をリアルタイムに検出可能な構成となっている. (2) オンライン議論支援フレームワークの開発:上述のマルチモーダル情報処理機構を,オンライン議論時のマルチモーダル情報を計測可能なCSCLプラットフォームに実装した.そして,前年度に検討した議論インタラクション検出・介入モデルを具体化した議論状況検出・助言提示のためのルール設定支援システムを開発した.ルール設定者は,上述のマルチモーダル情報処理に対応する議論状況検出ルールを設定できるとともに,任意のインタラクション状況に即した認知・情動・行動の3側面に働きかける助言を宣言的形式で設定できる.議論支援フレームワーク上に議論支援システムのプロトタイプを実装し,議論状況のリアルタイム検出から助言提示に至る一連の処理が動作することを確認している.
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