研究課題/領域番号 |
19K12277
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
坂本 千枝子 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 准教授 (10507867)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | がん登録 / がん登録実務者 / がん登録教材 / がん登録システム / データ分析 |
研究実績の概要 |
本研究はがん登録演習用の教材作成と、教材を用いてがん登録演習を行うための教育用がん登録システム(以下、がん登録システム)構築、そしてがん登録データを用いて統計分析のスキルを学ぶことを目的としている。演習用教材として大学院開発の教材データベース(以下、教材DB)に作成した模擬患者症例から、院内がん登録に必要な情報を集約したサマリを作成した。これを用いて行った演習の結果から学生が間違えやすいがん登録項目を把握した。この結果をもとに改訂版サマリを作成し、教材にバリエーションを加えた。これらを利用してがん登録を行い、さらにデータを蓄積した。がん登録は学生が演習で行う予定だったが、新型コロナウイルス感染対策上、対面授業ができなかったため、教員サイドで行った。がん登録システムはFileMakerで開発しており、2部構成の機能にした。一つ目の機能は、模擬患者のがん登録を行える学生演習用の登録システムで、従来開発してきたものである。院内がん登録は登録項目の選択肢が多かったり解釈に迷うものも多いため、登録候補をプルダウン方式や予測変換機能で選択しやすくし、解釈の説明が吹き出しで出るようにした。二つ目の機能は、院内がん登録拠点病院の協力を得て入手した2016~2018年の院内がん登録提出データを格納したデータベースを持ち、検索・集計・統計分析などができるシステムである。これにより、学生は教材をもとにがん情報の登録を演習しながらその技術を身につけ、正しいがん登録への理解を深めることができる。一方、がん登録情報の変更を不可とした分析システムでは、正しいデータをもとに分析法を学び分析結果の解釈などを学ぶことが出来るようになる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
教材やがん登録用システムは、学生による演習で教材やシステムの使いやすさを検証したり、登録項目の定義の解釈のわかりにくいものをみつけて、その都度改良を加えていくことが最も良い方法である。しかし、2019年度末からの新型コロナウイルス感染の広まりによって、がん登録実務経験のある大学院生の対面での演習ができなかった。このことがシステム開発が当初の予定通りに進まなかった大きな理由と考える。そのため、対面授業解禁期間のあった学部生で登校を希望した学部生11名に開発中のシステムで演習を計3回行った結果と、大学院生にZoomで行ったがん登録演習の結果を参考にした。Zoomでは、教材の評価しかできなかったので、院内がん登録拠点病院のがん登録実務者である研究協力者が教材を利用したがん登録を行った結果から、教材やシステムで改良すべき個所のほとんどを検討、改良することになった。 また、学生によるがん登録演習で蓄積したデータを用いた分析手法の演習が全くできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
1.がん登録用教材:①教材DB内に作成した院内がん登録情報を集約したサマリをもとに、がん登録実務経験に合わせたサマリを作成する。②学生が対面で演習できるようになるまでは、研究者側で教材DB内のサマリを用いてがん登録システムでがん登録を行い、がん登録システムの改良を進める。 2.実際に登録システムを用いた演習を行って、システムの評価を行う。利用者の意見を聞いて、改良できることは実施する。本システムは修正などが容易に行えるため、その利点を活かして、さらに使いやすくしていく。 3.複数回に分けて登録した場合にもデータ間に矛盾がないようにチェックする。登録したデータは、国立がん研究センターに提出する際に患者IDが変換されて個人識別が不可能になる仕組みである。がん登録システムでも提出するファイルの作成を行えるようにする。 4.分析用システムでは、協力施設の3年分のデータを本システムに取り込み一覧表を患者単位、腫瘍単位でそれぞれ作成できている。また、組織別、局在別、追跡期間などの項目で検索・抽出できる。これらの抽出データをエクセルまたはテキストファイルにエクスポートして、統計分析ソフトで分析するために、エクスポートするフォーマットを現在整備しており、これを完成させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会参加がオンラインになったため旅費の出費が抑えられた。2021年度も引き続き対面による授業が予定通り実施できないことが予想される。そこで、①教材を使ったがん登録システムへの登録作業 ②院内がん登録提出データを使った分析・解釈の授業はオンラインでもできるため、抽出データをエクセルまたはテキストにエクスポートするフォーマットの完成を急ぐ等の人件費に充てる。
|