本研究課題は,楽曲の多様な解釈・意味付け機構を備えたクラスタ分析エンジンを基礎とする楽曲類似検索手法の開発を目的としている.最終年度は主に,極大クリークに基づく楽曲クラスタの高速抽出のためのグラフ洗練化手法について考察し,これまでに提案した楽曲形式概念を含む楽曲クラスタに基づく楽曲プレイリストの自動合成手法を提案し,研究期間を通しての成果としてまとめた.
類似度グラフの洗練化手法:楽曲の類似関係を表す類似度グラフの極大クリークを抽出することで,楽曲の多様な類似性を捉えた楽曲クラスタが得られる.一方で,その抽出は計算コストの高い処理であり,高度な楽曲類似検索を実現する上でその効率化が強く求められる.本研究では,実用上合理的なクラスタサイズの下限制約を利用した類似度グラフの洗練化手法を提案し,洗練化の前後において,極大クリーク抽出処理が数倍から数百倍高速化されることを確認した.
プレイリストの自動合成手法:これまでに提案した楽曲形式概念クラスタ,および,楽曲クリーククラスタをもとに,プレイリストを自動生成する手法を提案した.ここでは,プレイリストにユーザの好みを反映させるために,始点となるクエリ楽曲 Ms と,終点となるクエリ楽曲 Mg をユーザ入力と仮定し,Ms から Mg へ至る楽曲系列をプレイリストとする.特に,構成楽曲群が類似性の点で自然に遷移するプレイリストを自動生成する手法を提案した.具体的には,楽曲クラスタをノードとする類似度グラフを構築し,Ms と Mg をそれぞれ含むクラスタノード間の最短パスを見つけることで,類似性が自然に遷移する楽曲クラスタ系列を得る.系列を構成する各クラスタはプレイリストを構成する楽曲の候補プールとなり,各候補プールからクラスタ系列に沿って楽曲をピックアップして並べることで類似性が自然に遷移するプレイリストを生成する.
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