研究課題/領域番号 |
19K12292
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
今井 圭理 北海道大学, 水産学部, 助教 (40725983)
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研究分担者 |
渡辺 豊 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (90333640)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海洋酸性化の定量的評価 / pHパラメタリゼーション |
研究実績の概要 |
大気中に放出された二酸化炭素が海に溶け込み、海中のpHが低下する海洋酸性化が近年顕在化し、海洋生態系に大きな影響を与える懸念がある。そこで、本研究では生物活動の活発な日本沿岸海域において、過去から現在にいたる海水中のpHの動態を明らかにし、日本沿岸海域での海洋酸性化はどのくらいの時空間規模で変化しつつあるのかを予測することを目的としている。本研究の第一目標として日本沿岸海域(北海道・東北沿岸海域)を年間幾度も航行する北海道大学・練習船「おしょろ丸」の表面海水モニタリングシステムを改良し、水温・塩分・溶存酸素・クロロフィルaおよびpHセンサから得られる連続的な観測値を用いて日本沿岸海域へ適用可能なpHの経験的関数(パラメタリゼーション:pH = f (塩分、酸素、クロロフィルa等))の開発を行うこととした。本研究開始年度には日本沿岸海域におけるpH のパラメタリゼーション構築に必要な高頻度なデータ取得を行うために北海道大学・練習船「おしょろ丸」既存の表面海水モニタリングシステム(水温、塩分、クロロフィルa、濁度の測定が可能)に溶存酸素センサー(本研究にて購入)とpH センサーおよび二酸化炭素計(環境省との協定による)を順次増設して当該年度末には多項目でのデータ取得が可能になった。そこで、該当年度においては「おしょろ丸」の航海毎に取得される各種センサーのデータの確度を検証するためにセンサーデータと実際の海水分析データの比較ための海水採取を行うと共にそれらの分析を進めることを主とした。その中で本研究にて増設した溶存酸素センサーと実測値の関係は最小二乗法の傾き1.004となってほぼ一致し、「おしょろ丸」の表層海水汲み上げのポンプが海水中のガス成分分析に適してることを証明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始年度においては申請時の計画通り既存の「おしょろ丸」表面海水モニタリングシステムへのセンサー類増設を完了し、pH のパラメタリゼーション構築に必要なデータ取得体制を整えることができた。また、北海道大学水産学部と環境省国立環境研究所の連携協定によってpHセンサーも納入され、本申請予算での購入センサーの項目を変更し、溶存酸素センサーを新規増設してデータ品質のさらなる向上となった。一方で新型コロナウイルス感染拡大に伴い、予定されていた該当年度の「おしょろ丸」航海が半減し、特に年度の上半期にその影響が出た。該当年度中盤からは航海が再開されたが、まだ連続データ取得数の少ないことや各種センサーのデータの確度検証実験の開始が遅れたため、当初計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は次に示す3つの研究項目を順に実行する研究計画を立案している。1)北海道大学・練習船「おしょろ丸」に装備された表面海水モニタリングシステムに、pH・DOセンサーおよび二酸化炭素計を増設する。2)取得データからpHの経験的関数(パラメタリゼーション:pH = f (塩分、酸素、クロロフィルa等))の確立を目指す。3)本研究で得られたパラメタリゼーションに過去のデータを導入しpHマッピングの時系列を復元し、日本沿岸海域における海洋酸性化の動態について定量的評価を目指す。現時点では表面海水モニタリングシステムの改良が完了し、各センサーデータ取得と同時に採水した海水の分析値との比較によって、センサーデータの補正を施し、日本沿岸域における高頻度高精度データ群の取得を行うと共にデータ解析期間を同時進行する段取りが整った。よって、2つ目以降の項目のパラメタリゼーションを確立・pHマッピングの実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため都市間の往来ができなかったことと、同様の理由で航海が中止になりサンプリング回数が減少したため次年度使用額が生じた。該当年度にできなかったサンプリングは次年度に繰り越して計画しているのでその費用に充てることができる。
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