研究実績の概要 |
大気中の二酸化炭素が海に溶け込んだ結果、海中のpHが低下する海洋酸性化が近年顕在化し、海洋生態系に影響を与える懸念がある。本研究では日本沿岸海域において、過去から現在にいたる海水中のpHの動態を明らかにし、日本沿岸海域での海洋酸性化の時空間変化とその規模を予測することを目的としている。そこで、日本沿岸海域(北海道・東北沿岸海域)を年間幾度も航行する北海道大学・練習船「おしょろ丸」の表面海水モニタリングシステムを改良し、日本沿岸海域へ適用可能なpHの経験的関数(パラメタリゼーション:pH = f (塩分、酸素、クロロフィルa等))の開発を行うために必要な多項目連続データ取得を行うことが第一目標である。本研究課題の3ヶ年のうち2年目までに「おしょろ丸」既存の表面海水モニタリングシステム(水温、塩分、クロロフィルa、濁度の測定)に溶存酸素センサ(本研究にて購入)とpHセンサおよび二酸化炭素計(環境省との協定による)を順次増設した。一方、新型コロナウイルス感染症拡大によって練習船の航海が中止され、表面海水モニタリングシステムの改良完了後から最終年度までに計画された母港(函館)を出入港する航海が25航海中10航海と半減してしまった。しかし、北海道(道南・道東)、東北沖において改良後のモニタリングシステムによるデータ取得と各種センサ較正のための海水試料採取ができたため、各種センサのデータの確度検証実験とそれらの検証を実施した。併せて、日本沿岸海域の過去のデータ群も含め、時空間的には粗いがpHのパラメタリゼーションの構築と時空間分布を明らかにできるようにもなった(Watanabe, Imai, et al., 2019)。研究期間は終了してしまったが、より時空間的に詳細な日本沿岸海域におけるpHマッピングの時系列復元を現在展開しており、近日中に学術雑誌にその成果を報告する予定である。
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