研究課題/領域番号 |
19K12293
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
林 武司 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (60431805)
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研究分担者 |
安原 正也 立正大学, 地球環境科学部, 教授 (40358205)
中村 高志 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (60538057)
中田 晴彦 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (60311875)
黒田 啓介 富山県立大学, 工学部, 准教授 (30738456)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マルチトレーサー法 / 都市域 / 地下水流動 / 環境同位体 / 人工甘味料 / PPCPs |
研究実績の概要 |
本年度当初は,昨年度に検討しなおした調査候補地点を現地調査により確認し,調査測線を再設定したうえで本調査に着手することを計画していた.しかし,COVID-19の流行が継続して現地調査を実施できない状況が続いたことから,以下の作業を中心に研究を進めた. 本研究の対象地域を含む関東平野西縁部の湧水を対象として,土地利用の変遷と湧水の現存状況を調査・整理した.土地利用の変遷については明治期から現代までの状況を1:50,000地形図や空中写真等を用いて把握し,湧水については埼玉県や東京都,環境省等の所管するデータベースや既往論文,市町村史等を用いて分布や現存状況等を把握した.これらの情報を,昨年度から整備を進めている地質情報とあわせて整理した.平野西縁部の地形や地質は多様であるが,湧水の立地には共通性が認められ,台地・扇状地上の段丘崖に湧出するもの,台地上を流れる河川の河床・護岸部に湧出するもの,台地・扇状地末端部の段丘崖(小谷頭部を含む)・扇端部に湧出するものに大別された.なお,一部の湧水は段丘面上に立地した.土地利用の変遷と湧水の存続との関係については,地形上の涵養域の都市化の進行に対して,扇端部や台地縁辺部の段丘崖に位置する湧水では現存するものが相対的に多く,扇状地・台地上の段丘崖や段丘面上に位置する湧水では枯渇したものが相対的に多かった.両者の違いは,都市化に伴う涵養域の土地被覆率の変化に加え,地下水涵養域の規模の違いや,上下水道漏水等の人為由来の地下水涵養源の寄与率の違い等を反映していると考えられた.これらの成果は,本研究で用いる各種トレーサーの性状評価の基盤情報の一部となるものである.本成果の一部は,JpGU2021にて発表予定である. また,各研究分担者は調査・分析環境の整備を進め,COVID-19流行の改善後に速やかに現地調査に着手できるように体制の整備を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,首都圏を擁する関東平野の西縁部に位置する武蔵野台地ならびに荒川扇状地を対象地域としている.昨年度来,首都圏のCOVID-19の流行状況が改善されないことにより,現地調査を実施できない状況が続いている.一方,上述したように,湧水の分布や土地利用の変遷等について情報の収集・整理を進めており,昨年度に実施した地下地質構造の把握とあわせて,本研究で用いる環境トレーサーの性状評価に用いる情報の整備は特段の問題なく進行している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見について研究者間で共有化を進め,研究対象地域について理解を深めつつ,現地調査の準備を行う.また研究分担者の1人は,COVID-19の状況を踏まえつつ,荒川扇状地および周辺地域の現地観察を開始した.今後,COVID-19の状況が改善した時点で,速やかに現地調査に着手したい.ただし,現地調査の実施については,調査対象の所有・管理者の状況や天候等を考慮して時期を決定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では,現地調査ならびに各種トレーサーの分析に予算の多くを割り当てている.調査・分析環境の整備に必要なものについては購入を進めたが、上記の通り現地調査を実施できていないことから,予算の多くが未使用となっている.今後, COVID-19の状況が改善して現地調査が実施可能となった時点で,現地調査ならびに各種トレーサーの分析等を実施して予算を執行する.また、今後の状況に応じて予算の再分配を行う.
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