研究課題/領域番号 |
19K12293
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
林 武司 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (60431805)
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研究分担者 |
安原 正也 立正大学, 地球環境科学部, 教授 (40358205)
中村 高志 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60538057)
中田 晴彦 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (60311875)
黒田 啓介 富山県立大学, 工学部, 准教授 (30738456)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マルチトレーサー法 / 都市域 / 地下水流動 / 溶存イオン / 環境同位体 / PPCPs / 人工甘味料 / 涵養年代 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,都市域における地下水環境を把握するためのマルチトレーサー法を構築することにある.2022年度には,関東平野西縁部の荒川扇状地から武蔵野台地(東京都内については区部のみ)にかけての地域に点在する22地点の湧水ならびに自噴井を対象として,2022年10月に現地の状況を確認したうえで同年12月に調査を実施した.調査に際しては,現地にて水の物理化学性状を把握するとともに試料を採取し,主要溶存イオン,環境同位体,PPCPs,人工甘味料,大腸菌・大腸菌群を分析した.その結果,主要溶存イオンについては,人為影響の指標となるCl,NO3,SO4等の濃度や相関関係から,いずれの調査地点も人為影響(生活排水,農地からの影響等)を受けていると考えられた.また,各溶存イオンの性状には地域性が認められたが,これらは各地域の土地利用の特徴の違い(武蔵野台地(東京都区部)では市街地を主体とするのに対して,荒川扇状地に向かって郊外型~農地の広がる土地利用へと遷移する)を反映していると考えられた.一方,PPCPs,人工甘味料については,全ての調査地点において複数のPPCPsや人工甘味料が検出されたことから,対象地域では都市化の程度や下水道普及率によらず,生活排水が地下水の涵養源の一部となっていると考えられた.この結果は,主要溶存イオン組成と矛盾しない.また,検出された人工甘味料の日本国内での許認可年を考慮すると,一部地域では平均滞留時間の長い(古い)地下水と短い(新しい)地下水の混在が考えられた.本調査で得られた結果は,マルチトレーサー法を用いることによって,都市域の地下水の起源の評価や分離,涵養年代の把握,流動機構の把握等が可能となることを示すものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように,首都圏に属しながらも都市化の程度(土地利用の特徴)の多様な地域に点在する湧水・自噴井群を対象として水の物理化学性状,溶存イオン,溶存物質,微生物等を調査した結果から,これらの性状を総合的に検討することによって地下水の起源の評価や分離,涵養年代の把握,流動機構の把握等が可能となることを確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には,2022年度と異なる時期に現地調査を実施し,各項目の性状の季節性について確認するとともに年代指標等についても調査を行う.これらの結果と2022年度の調査結果,これまでに収集・整備してきた対象地域の土地利用や地下地質等の情報を総合して,都市域における地下水環境を把握するためのマルチトレーサー法を構築する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では,現地調査ならびに各項目の分析に予算の多くを割り当てている.本研究の目的であるマルチトレーサー法の構築には,各項目の性状を複数の季節下において把握する必要があるが,2022年度もCOVID-19の流行の影響が継続し,1回の調査にとどまった.このため研究期間を延長し,2023年度にも調査を実施する.予算は,その際の旅費や分析費用等として執行する.
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