研究課題/領域番号 |
19K12294
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
近藤 雅征 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 特別研究員 (40754346)
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研究分担者 |
小林 秀樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), グループリーダー代理 (10392961)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 林齢 / 物質循環 / 生態系モデル / バイオマス / 最適化 |
研究実績の概要 |
衛星マイクロ波データから推定した植生の光学的厚さ(VOD:Vegetation Optical Depth)を昨年度に取得した4種のデータに加え、L-バンドに基づいて推定したVODデータを追加取得し、計5種の共通処理を施したVODデータを準備した。また、これらのVODデータは植生バイオマスと高い相関関係を示したが、波長により飽和点が異なることが分かった。L-バンドに基づくVODデータは植生バイオマスと最も高い相関を示したが、Ku-バンドに基づくVODデータは高い値で飽和することが分かった。つまり、Ku-バンドでは高い値の植生バイオマスを再現できない。しかし、L-バンドは最も利用期間が短く(2010年以降)、一方で、Ku-バンドは最も長い(1987年以降)など、其々のデータに利点欠点があることが分かった。 また、VODデータから算出した植生バイオマスを用い、生態系モデルのデータ同化アルゴリズムの作成を実施した。この過程で、モデル内の植生バイオマスを算出する過程に観測データで制約できないパラメータ(理論・仮説によるもの)が関わることから、これらのパラメータ値の選択によりデータ同化の精度が大きくばらつくこと分かった。このため、よりシンプルな経験モデルに移行すべきかを検討する必要がある。 最後に、VODデータから算出した1987年-2020年間の植生バイオマス、また、生態系モデルから算出した1900年-2019年間の植生バイオマスに対し、複数の成長曲線式をフィッティングした結果、他より自由度の高いMitcherich式が最も適した式であることが分かった。 成長曲線式のフィッティングの結果から、複数の林齢マップを作製したが、成長曲線の基となるデータによって地域的なばらつきが検出された。今後は、将来予測を加味した成長曲線を作成し、林齢分布の更なる精緻可を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は1種のVODデータを基に林齢マップを作製することを計画していたが、計5種のVODデータが利用可能となった。これにより、林齢マップの精度をより深く追及できることに加え、最終的なマップに不確実性を加えることができる。
生態系モデルのデータ同化アルゴリズムの作成は、概ね順調に進行している。これに加えて経験的なシンプルモデルによるデータ同化アルゴリズムの構築を新たに進めることができた。
林齢マップの作成に至るアルゴリズム・手順は概ね完成している。今後は、最終的なプロダクトの作成に向けての精緻可を進める。
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今後の研究の推進方策 |
林齢マップの算出に必要なデータの取得・共通処理、アルゴリズムの構築は、計画以上に進めることができた。今後はプロジェクトの最終プロダクトである林齢マップの精度を追求する。これには、VODデータの比較、データ同化アルゴリズムの精度向上、を進めると共に、既存の林齢マップ(北アメリカ、中国)との比較・検証を行う必要がある。また、これらの結果を取りまとめ論文にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により出張が不可能となり、使用額が大幅に減少した。データ処理・解析に必要な大型計算機を寄贈されたため、その分、物品購入費を使用しなかった。これらの未使用額はこれからの解析に必要なデータの保存機器の購入に充てる。
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