研究課題/領域番号 |
19K12297
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩本 洋子 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (60599645)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大気エアロゾル / 燃焼起源鉄 / 連続観測 / バルク化学分析 / 個別粒子分析 |
研究実績の概要 |
燃焼起源鉄を含む大気エアロゾル粒子のエイジング過程を、燃焼起源鉄の発生源に近い沿岸サイト(広島大学練習船呉基地)と海陸風循環の影響を受ける内陸サイト(広島大学東広島キャンパス)を利用して解明する事が本研究課題の目的である。 内陸サイトでは、2020年4、6、8、10、12月の間に2ヶ月毎に2週間の大気観測を行った。大気観測では、光散乱粒子計数器、凝結粒子計数器、雲凝結核計数器を用いた粒子数濃度の連続観測を行った。また、粗大(PM>2.5)および微小(PM2.5)粒子を24時間間隔で捕集し、主要イオン成分と水溶性有機炭素の質量濃度を分析した。後方流跡線解析の結果、内陸サイトでは4、10、12月が大陸起源、8月が海洋起源、6月が国内起源のエアマスの影響下であった。また4月に黄砂、8月には西之島噴火の影響が確認された。日内変化に関しては、日射量の大きい4、6、8月に日中の新粒子生成による粒子数濃度の増加が見られた。西之島噴火の影響を受けた期間は、粒径分布のモード径が大きかった。これは、火山由来気体を前駆気体とする粒子生成・成長によるものと考えられた。太平洋高気圧下で比較的風が弱く、海陸風循環が発達しやすい夏季においても、気圧配置によっては長距離輸送の影響により大気質が変化することがわかった。 2021年1月より、沿岸サイトと内陸サイトで同じ型式のハイボリウムエアロゾルサンプラを設置し、粗大(PM>2.5)および微小(PM2.5)粒子の連続採取を開始した。冬季の主要イオン成分に関して、両サイト共に、粗大粒子では海塩起源成分と硝酸イオン、微小粒子では硫酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオンの割合が高いことがわかった。燃焼起源物質の発生源に近い沿岸サイトの方が、微小粒子中の主要イオン成分濃度が高い傾向であった。一方で、粗大粒子中の硝酸イオンは、内陸サイトの方が高濃度である傾向があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内陸サイトにおける大気エアロゾルの物理・化学的性質の季節変化を把握できたため。また、内陸サイトと沿岸サイトの両地点で同様の大気エアロゾルサンプリングを開始できたため。
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今後の研究の推進方策 |
内陸サイトと沿岸サイトで同時に季節毎の大気エアロゾルサンプリングを実施する。海陸風循環の発達しやすい夏季は集中観測期間として、時間分解能の高いサンプリングを試みる。また、主要イオン成分分析に加えて、ICP発光分光分析による金属成分の分析と個別粒子分析を行う。2021年9月に沿岸サイトの近傍に位置する製鉄所の高炉の休止が予定されているため、高炉休止前後を含む期間に集中観測を行い、高炉休止が大気エアロゾル中の燃焼起源鉄の濃度や形態に与える影響を調査する。
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