研究実績の概要 |
キレート固相抽出法を併用するICP-MS法により,多摩川の中流域から河口域までの15地点で採水した河川水試料を分析し,Sc,YおよびPmを除く14元素の希土類元素とその他のレアメタルを44元素について、100 μg L-1から0.1 ng L-1までの濃度レベルで、概ね相対標準偏差(RSD)0.2~10%で精度よく定量することができた。 下水処理放流水の流入前後の河川水試料を多元素プロファイリングアナリシスにより比較したところ、放流水流入後のB, Li, Rb, Mn, Ni, Mo, Co, Cs, Gdの濃度は、流入前に比べて数倍から数十倍高かった。これらの元素は明らかに下水処理放流水から河川水に流入したと考えられる。いずれも河川水中濃度はng L-1 (ppt)レベルであり、著しい濃度上昇ではないが、下水処理放流水の影響を受けて濃度上昇が起こることが明らかになった。Gdの他にも8元素が同様の傾向を示すことから、Gd以外のレアメタルも潜在的汚染元素となる可能性があることが示唆された。 また、河川水中希土類元素濃度の経年変化を検討したところ、過去の分析結果報告がある中流域と河口域の2地点においては、河川水中Gd濃度が、変動幅を考慮しても約20年前の文献値と比べてそれぞれ2-4倍,3-4倍となった。したがって、多摩川河川水におけるGd濃度は、近年上昇したことが明らかになった。 水生生物としてトビケラ幼虫を下水処理場の前後の4地点で採取して分析した結果、希土類元素14元素とその他レアメタル17元素について定量値を得た。希土類元素はいずれも生物濃縮係数は高かったが、トビケラ幼虫へのGdの特異的な濃縮は見られなかった。その他レアメタルでは、下水処理場下流で採取したトビケラ幼虫に含まれるLi, Ti, V, Gaの濃度が高く、河川水の分析結果とは異なる特徴が確認された。
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