研究課題/領域番号 |
19K12300
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
伊藤 彰英 麻布大学, 生命・環境科学部, 教授 (60273265)
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研究分担者 |
朱 彦北 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90422790)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 河川水 / 潜在的汚染 / レアメタル / 希土類元素 / ICP-MS / キレート固相抽出 / 下水処理放流水 / 水生生物 |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度に引き続き中流域から下流域にかけて多摩川河川水中の希土類元素及びその他レアメタルを、キレート固相抽出を併用するICP-MS法で多元素定量し、潜在的汚染元素について解析を進めた。また、河川水試料だけでなく、下水処理放流水の分析も行った。しかし、共存する有機物の影響でキレート固相抽出法における希土類元素の回収率が低下するという問題が見られたため、濃縮操作前に、硝酸、過酸化水素を用いて加圧酸分解処理を行い、回収率の低下を抑制した。 下水処理放流水から河川水に流入した潜在的汚染元素の動態解析を行うために、河川水中粒子態成分も分析し、溶存している潜在的汚染元素の粒子態への移行を調査した。また、河口域で海水から塩分が流入してくる際に、塩析によりコロイド粒子が潜在的汚染元素を含む溶存化学種を吸着させながら沈殿・除去される可能性があるため、下水処理放流水流入直後の河川水に対して、海水の主成分となる塩分を0~3.5%まで段階的に添加した後、粒子態成分と溶存態成分を分別分析した。その結果、塩分濃度の増加とともに粒子態成分量が徐々に増加することが明らかになった。塩分0%を基準とした塩分1.4%のときのレアメタルの相対濃度は、Gdを含む6元素( Li, Ni, Rb, Mo, Cs, Gd ) の潜在的汚染元素について、塩分無添加の場合と比べて、2倍以上の濃度となった。 水生生物への摂取プロセスを調査するために、水生魚類のヨシノボリを潜在的汚染元素を添加した水槽中で飼育した後、分析した。Gd 造影剤を添加した水道水で飼育したヨシノボリは、水道水のみ(コントロール)で飼育した場合と比べ、約 3 倍の Gd の濃度上昇が確認された。Gd 造影剤は水中では Gd 錯体の形態で存在しており、Gd3+の形態で暴露した時と同様に、ヨシノボリに濃縮されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
河川水中における潜在的汚染元素の広域分布をモニタリング的に明らかにした。また潜在的汚染元素の濃度だけでなくその化学形態別分析を行える手法の検討も進行している。また、船体的汚染元素の動態解析について、粒子への吸着や水生生物への摂取状況についても調査を行った。ほぼ当初の予定通り順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、潜在的汚染元素全般について化学形態別分析を行える分析法を検討している。3種の固相抽出を逐次的に用いる方法を検討しているが、現在はマトリックスの影響を受けて、陽イオン態、陰イオン態、有機物結合態の分離が正確に行えないという課題があるため、間マトリックスの除去法と組み合わせて改良を行う予定である。 確立した潜在的汚染元素の化学形態別分析法と昨年度行った粒子成分と溶存成分の分別分析を組み合わせることにより、潜在的汚染元素の動態解析をさらに進める。最終的に潜在的汚染元素の動態についてモデル化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、雇用者が大学に来れない期間があったため、人件費が予定した額よりも少額となった。また、実験ができなかった期間があり、使用する消耗品の一部が予定よりも少ない量となった。今年度は昨年度できなかった実験も含めて実験量を増やすことを検討しているため、次年度使用額は主に実験消耗品にあてる。
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