研究実績の概要 |
今年度は昨年度までに確立した河川水及び下水処理放流水に含まれるレアメタルの網羅的多元素分析法である還流型加熱酸分解処理を併用したキレート固相抽出/ICP-MS法を2017年から2021年度まで3~4か月おきに11回にわたり多摩川中流域から下流域にかけてサンプリングした河川水試料や下水処理放流水試料の分析に適用し、潜在的人為汚染元素の特徴について解析を進めた。その結果、いずれかの試料について下水処理放流水合流後に数倍から10倍程度濃度上昇がみられた潜在的人為汚染元素として、Gd, B, Mn, Co, Ge, Rb, Mo, Cs, Ptなどレアメタル30元素が確認された。この中で、11回のモニタリング分析において常に下水処理放流水による濃度上昇が確認された元素としてLi, B, Mn, Co, Ni, Ge, Rb, Cs, Ba, Sc, Se, Y, Mo, Ba, Dy, Gd, Ho, Er, Tm, Yb, Luのレアメタル21元素が確認された。これらの元素はこの4年の間の明らかな濃度上昇は見られないが、今後継続的な監視が必要なレアメタルと考えられる。この21元素の中の3分の1を占める希土類元素に着目し、東京都と神奈川県の県境にそって流れる2級河川である境川の分析を行ったっところ、MRI造影剤を起源とする濃度異常が確認されるいるGdの他にEuについても明らかな濃度上昇がみられた。 陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂、ODSなどの固相抽出剤を用いて、逐次的に潜在的汚染元素の化学形態別分析を行ったところ、Gdの多くはMRI造影剤と同じ陰イオン形のまま河川水中に流出しており、粒子形態への取り込み割合も小さいことが明らかになった。河川水による希釈により濃度は減少するものの、河口域でも除去されずに海域に流出することが明らかになった。
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